夏に多い「尿路結石」

なぜ夏に多い「尿路結石」 予防・再発防止のポイント
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日本人男性の7人に1人、女性の15人に1人が一度は経験するという尿路結石。
「痛みの王様(king of pain)」の異名を持つほど、激烈な痛みが特徴だ。
しかも、約半数の人が再発を繰り返すという、厄介な病気でもある。
大口東総合病院泌尿器科部長の松崎純一氏に、
尿路結石の原因と治療、再発させないためのポイントを聞いた。


◆尿が濃縮される夏は、尿路結石のハイシーズン
「石が尿管の壁を傷つけるから痛くなる」と思いがちですが、
実はそうではありません。
腎臓は24時間ずっと尿を作っているので、
尿管に石が挟まって尿の流れが遮断されると、腎臓の内圧が上昇します。
すると腎被膜という、腎臓の表面を覆う膜が引き伸ばされて痛みが出るのです。
そのため、石が尿管に挟まっている場合でも、痛むのは腎臓そのものです。
痛みとして感じるのはわき腹や腰背部で、
どんな気丈な人も救急車を呼ばざるを得ないほどの痛みです。
さらに、発熱、吐き気、血尿などの症状が出ることもあります。





結石の成分は数種類あります。
8〜9割を占めるのがカルシウム結石で、
カルシウムと他の物質がくっついて石になるものをいいます。
中でも特に多いのがシュウ酸と結合するシュウ酸カルシウム結石です。
シュウ酸はほうれん草に含まれることで知られますが、
シュウ酸そのものが結晶化するのではなく、
カルシウムとくっついて初めて石になります。


尿路結石は、糖尿病、高血圧、痛風脂質異常症などの
生活習慣病の患者に多いことが分かっています。
男性の尿路結石患者の40.3%が肥満だという報告もあり、
メタボリックシンドロームとも深い関係があります[注1]。
理由は、食生活の欧米化です。
動物性脂肪の多い食事、例えば、バターやチーズ、卵などを含む食事が続くと、
カルシウムやシュウ酸が尿へ溶け出す量が増え、
カルシウム結石ができやすくなります。また、尿は本来、弱酸性ですが、
こうした食事で尿が酸性に傾くことも、尿路結石に影響するとされます。





◆小さな石は自然に排出させ、大きな石は手術で砕く
4mm以下の小さい石なら8割は30〜40日で自然に出ます。
1日2リットル以上の水分摂取をしながら、
縄跳びのような上下運動を行い、さらに薬を使って排出を促します。


薬物療法には、尿管を拡張して石を出しやすくする薬のほか、
痛みがあれば鎮痛薬も使います。
α1遮断薬も効果が高く、使わないよりは石が出やすくなります。
ただし現時点では尿路結石での処方には健康保険が適用されません。


CTスキャンで結石の硬さを把握し、
石が軟らかく割れやすい場合には体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、
硬い場合は内視鏡治療を行います(表1)。
体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、
石の場所にピンポイントで焦点を合わせて、体外から衝撃波で砕く治療です。
虫眼鏡のように、太陽光を一点だけに集めるようなイメージで石を割ります。
砕かれた石は、自然に尿とともに出てくるのを待ちます。


この治療の利点は、日帰りが可能で、
痛みも軽く、患者さんの負担が少ないことです。
しかし、粉々に割れないと途中で詰まって再び激痛が起こるうえ、
石を完全に取り除ける内視鏡に比べると再発率が高いのが難点です。


内視鏡には、尿道から内視鏡を入れる経尿道的結石破砕術(TUL)と、
背中から腎臓に穴を開けて内視鏡を入れる経皮的結石破砕術(PNL)の2つがあります。


このうち、よく行われるのは経尿道的結石破砕術(TUL)です。
細くて曲がりやすい内視鏡を使うので、
尿道から膀胱を経由し、腎臓の隅々まで届きます。
レーザーなどで石を砕き、そのまま体外に除去することができるのが特徴です。
ただし、内視鏡手術の成功は医師の腕によるところが大きいため、
症例数の多い病院を選ぶことをお勧めします。


◆カルシウム結石は半数近くが再発、放置すると腎障害の恐れ
再発率が高いのが尿路結石の特徴で、カルシウム結石は5年で45%も再発します。
予防のポイントは水分摂取と運動、バランスの取れた食事です(表2)。


ほうれん草など、シュウ酸を多く含む食材を避ければいいと思うかもしれませんが、
シュウ酸をゼロにすると食べる物がないほど、さまざまな食材に含まれます。
そこで有効なのが、食事で牛乳などの乳製品全般や緑黄色野菜、
ゴマなどカルシウムを多く含む食品を積極的に摂取することです。
食べ物からカルシウムを摂取すると、
胃腸の中のシュウ酸とカルシウムがくっついて、便と一緒に排せつされます。
そのぶん尿に溶け出すシュウ酸が減り、尿管結石ができにくくなるのです。
カルシウム結石なのにカルシウムを摂取するというのは一見矛盾して見えますが、
現在ではこれが通説です。