毒キノコの見分け方

毒キノコの見分け方、俗説に注意 色は無関係
主な20種、覚えて回避
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59746610U3A910C1MZ4001/





◆毎年200人前後中毒
キノコは国内に数千種類が存在し、
このうち毒を持つタイプも200種類以上あるといわれている。
厚生労働省の統計によると、国内では毎年200人前後のキノコ中毒患者が出る。


京都薬科大学の橋本貴美子准教授は「根拠がない俗説に頼るのは危険だ」と注意を促す。
例えば「色が鮮明なキノコは毒で、おとなしい色は食べられる」という説。
橋本准教授が編集に関わった図鑑を開くと、
中毒者が多い22種類のうち赤いキノコは1種類で、
他は茶色や白など地味なものばかり。色と毒には直接の関係はない。


また「茎が縦に裂けるキノコは食べても大丈夫」との説も間違いだ。
毒キノコの多くは茎が縦に裂ける。
「塩漬けにすれば食べられる」というのも、
毒の成分が水に溶けない大部分の毒キノコには通用しない。
「ナスと煮ると毒が消える」
「虫やナメクジが食べていれば大丈夫」
「乾燥すれば食べられる」などもあてにならない俗説だ。


毒キノコのうち中毒者が多いタイプの種類は限られるので、
まずは図鑑を参考に、主な約20種類の名前や特徴を覚えよう。
最近見つかった品種も載っている比較的新しい図鑑を利用するのがよいという。


特に注意すべきキノコはどれか。
橋本准教授が真っ先に挙げるのがカエンタケだ。
ブナ林などに生え、派手な朱色。
通常のキノコと異なりイソギンチャクの触手のような形をしている。
猛毒のトリコテセン類を含み、小指の先ほどの量を食べただけで死に至る。
汁も毒を含んでおり、珍しがって触ると皮膚がただれる。
「見つけたら火箸で取り上げ、袋に入れて焼却処分してほしい」(橋本准教授)


ドクツルタケを挙げるのは滋賀大学の横山和正名誉教授だ。
茎も傘も白く、松林のほか都市部の木の下にも生える。
ビロトキシン類など複数の毒成分を含み、1本食べると数時間で激しい下痢になる。
腎臓や肝臓などの細胞にあるミトコンドリアを破壊し、亡くなる患者もいるという。


これらのほかに、死に至るケースは少ないものの
毎年多くの中毒者を出す「三大毒キノコ」もある。


その筆頭がクサウラベニタケだ。
広葉樹などに発生し、食用のウラベニホテイシメジとよく似ている。
このため間違えて食べる人が多い。
また、カキシメジは赤褐色やうすい黄褐色の傘を持ち、
食用のニセアブラシメジなどに似ている。
高原や北日本のブナ林などに生えるツキヨタケもシイタケに似た毒キノコだ。
これらを食べてしまうと、嘔吐や腹痛、下痢などの症状に苦しむことになる。


◆ぬるま湯飲ませる
悪酔いや幻覚を起こすタイプもある。
トヨタケはアルコール分解酵素の働きを阻害するため、
飲酒しながら食べると頭痛や呼吸困難が起きる。
ヒカゲシビレタケは中枢神経系に作用し、幻覚症状や手足のしびれを起こす。
「精神が錯乱し、ビルから飛び降りて死亡したケースも報告されている」(横山名誉教授)


キノコを食べて体調が悪くなったら、まず応急処置をする。
患者にぬるま湯を飲ませるとともに、指をのどの奥に入れて食べたキノコを吐かせる。
木炭の粉末があれば、水と一緒にとることで胃腸内の毒の吸着に役立つ。


利尿作用がある緑茶やドクダミ茶を飲んだり、
下剤や浣腸で毒を排出したりするのも効果的という。
スポーツ飲料をとれば嘔吐や下痢で失われた水分や電解質を補える。


横山名誉教授によると、世界のキノコのうち名前が付いたものはわずか3%しかない。
図鑑に載っていない未知の毒キノコが存在する可能性もある。


◆写真付きで詳しく紹介
 「日本の毒きのこ」(長沢栄史監修、学研教育出版
《ホームページ》
◆中毒症状別に解説
 「毒きのこDataBase」
http://www.edu.shiga-u.ac.jp/db/kinoko/