パーキンソン病、日本発の新薬と他の薬を併用

パーキンソン病、日本発の新薬と他の薬を併用 効果長持ち
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56964070U3A700C1EL1P01/





5月に発売された「イストラデフィリン(商品名ノウリアスト)」。
「従来薬を増やしたくても副作用の懸念で増やしにくかった患者に使いやすいだろう」
と新薬治験の助言をしていたリハビリテーション花の舎病院の近藤智善院長は話す。


パーキンソン病は脳の黒質という部分で、運動の指令にかかわる
神経伝達物質ドーパミンを作る神経細胞が減って起こるとされる。
患者の9割は原因不明。
50〜65歳での発症が多く、国内の患者数は約15万人。
高齢になるほど発症しやすくなるため、患者数も増えている。


治療は、ドーパミンを補充する「L―ドーパ」の服用が主体。
よく効く薬だが、何年か使い続けると効果の持続時間(オン)が短くなり、
効果が切れて動きにくいなどの症状が出る(オフ)時間が出てくる。
服用量を増やすと、自分の意志とは無関係に手足が動くジスキネジア
という症状が出やすく「増やすのには限界がある」(近藤院長)。


◆バランス整える
このためドーパミンの働きを補う「ドーパミンアゴニスト製剤」を併用することも
多いが、効果を持続させるのは限度があり、幻覚などの副作用の心配も出てくる。


治療期間が長くなると多くの患者は1日に何度かある薬の効果切れに悩まされる。
「怖くて外出を控えたり、夜間や早朝にトイレに間に合わなくなったりするなどで
困る患者は多い」のが現状だ。


新薬はドーパミンとは作用が違うアデノシンという物質の働きを抑制し、
減ったドーパミンとのバランスを回復させて運動機能を改善させる。
臨床試験では1日1回服用すると、「L―ドーパ」が効かなくなるオフ時間が
1日平均約1時間短くなった。
臨床試験に参加したほとんどの患者は、「L―ドーパ」を含めた複数の薬を
併用していたため、既存薬と一緒に使える薬だという。


約2500人を治療する順天堂大学順天堂医院では、新薬を使った治療を開始。
服部信孝教授は「確実にオフ時間は短くなっている」と手応えを感じている。
「L―ドーパ」や「ドーパミンアゴニスト製剤」で
効果が不十分になった場合に使いやすいという。


新薬は協和発酵キリンが日本で治験をして発売したため、まだ日本の患者しか使えない。
既存薬にない新しい作用の仕方をする薬だけに、使い方を模索しながら検証していく。
「日本生まれの薬がパーキンソン病の新しい治療法として世界に普及するかもしれない」
(服部教授)という。


このほかにも、2010年以降、効果の持続を目指した薬が相次いで登場している。
1回の服用で効果が長く続く徐放性のドーパミンアゴニスト製剤が増加。
2月には皮膚に貼るタイプも発売された。
仕事中に薬が切れて動けなくなるなどの緊急時のために自分で注射して
効果が約1時間続く薬も使えるようになった。このほか手術療法もある。


◆使い分け重要に
治療の種類が増えたことで、服部教授は
「うまく選びながら治療し続ければ、発症してから15〜20年は
元気に日常生活を過ごせるようになった」と話す。
もうひとつ最近、海外で実施されている臨床試験の結果から、
パーキンソン病と診断されたらできるだけ早期に治療を始めたほうが、
病気の進行がゆるやかになり、症状の経過が良いことがわかってきた。