iPS細胞で創薬 京大・東大ベンチャー

iPS細胞で創薬 京大・東大VB、止血剤18年にも量産
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD010GZ_R00C13A5MM8000/?dg=1



京都大学東京大学の研究グループが設立したベンチャー企業
あらゆる細胞に変化するiPS細胞を使い止血剤の生産に乗り出す。
年内にも生産技術を確立し2015年に臨床試験(治験)を実施。
18年にも日米での販売を目指す。
止血剤を安定供給し、ウイルスなどの感染リスクを減らす狙い。
iPS細胞をもとに開発した医薬品を大量生産する世界初のケースとなり、
創薬分野へのiPS細胞の活用が広がりそうだ。


外科手術などに用いられる止血剤は、
献血で得た血液を原料とする「血液製剤」の一つで、
提供者から病原体が混入するリスクが常にある。
血液製剤は過去には「薬害エイズ」や「薬害肝炎」などの問題が起きた。
その後日本も安全対策を進めたが、血液製剤の投与による感染症の発生は絶えず、
未知のウイルスの感染リスクも残る。献血頼みのため血液の安定確保も課題だ。


京大と東大の研究グループが共同で設立したバイオベンチャー
メガカリオン(三輪玄二郎社長)は、
iPS細胞を使い止血剤の品質向上などにつなげる。
まずiPS細胞を止血剤の主要成分である血小板を作る細胞に変化させる。
次にその細胞を無限に増殖させて血小板を大量生産する仕組みだ。


iPS細胞を使えば献血に頼ることなく、
止血剤の主要成分の血小板を製造でき、止血剤の量の確保につながる。
献血経由のウイルス混入リスクも抑えることができる。


ベンチャーは年内に京大内に研究施設を新設。
米食品医薬品局(FDA)と厚生労働省の認可を得て、15年以降に日米で治験を実施。
安全性や効果が証明できれば、18〜20年をメドに両国で実用化する。


iPS細胞は、これまで再生医療分野での研究が進んでいた。
理化学研究所は失明の可能性がある難病、加齢黄斑変性の臨床研究に乗り出す。
今後、創薬分野でも応用が活発化する見通しで、
iPS細胞を使った輸血製剤などの開発が進む方向だ。
薬剤の副作用の有無などをiPS細胞から作った臓器細胞で確認し、
迅速な新薬開発につなげることも期待されている。


政府もiPS細胞など先端医療の実用化に向け、
「大胆に規制・制度を見直していく」(安倍晋三首相)方針。
今の通常国会で、実用化を促すための規制法案と薬事法改正案を提出し、
最新の医薬品を早期に承認できる仕組みを導入する。
医療分野の研究開発の司令塔として
NIHをモデルにした「日本版NIH」を来年度に創設する方針だ。