エパデール

笹嶋勝「クスリの鉄則」



イコサペント酸エチルの特徴と注意点 その2

イコサペント酸エチル製剤の歴史

1970年代に発表された疫学調査結果において
欧米人(デンマーク人)の心臓病による死亡率が34.7%であるのに対し
イヌイットグリーンランド人)の心臓病による死亡率が5.3%と低いことが報告されました。
肉を多く食べる欧米人の血中にはアラキドン酸(以下、AA)が多く
イヌイットの血中にはイコサペント酸エチル(以下、EPA)が多いことが分かりました。


これは、イヌイットの主食となっている魚やアザラシにEPAが多いためと考えられました。
なお、植物性脂肪のなかでリノール酸やマーガリンはAAを多く含み
αリノレン酸エゴマ油、シソ油はEPAを多く含みます。


同時期に、AAから作られるプロスラグランジン類に
血栓形成作用のあることが明らかになりました。
現在では、血清中のEPAとAAの比が重要視されています。


これらのことから、EPAに抗血栓作用が期待され、薬剤として開発されました。
天然のイワシを原料にしているためEPAの精製技術も必要ですし
薬物動態を調べるときは通常は絶食下で行いますが
被験者が服用限界量まで服用したにもかかわらず
空腹時には血中濃度が全く上がらなかったことなど、開発は苦労の連続だったようです。

特徴

薬理作用
EPAは多様な生理作用を持っていますので
製薬会社が作ったエパデールに関する以下のウエブサイトを参照してください。
図で示され情報が充実しています。
http://www.mochida.co.jp/dis/medicaldomain/circulatory/epadel/index.html


吸収
空腹時では吸収されず、胆汁酸の分泌を促す食事が必須です。
十分吸収させるためには食直後の服用が必要であることも解説します。

注意点

出血傾向に注意が必要です。
EPAは血小板膜リン脂質に取り込まれ、1〜2週間後に抗血小板作用が現れます。
血小板中のEPA濃度は2週間で最高になります。
アスピリンやクロピドグレルなどと同様に抗血小板作用は非可逆的であるため
新しい血小板と替わるまで出血傾向は続くことになります。


そこで、手術など出血を伴う処置の1週間くらい前には
投与を中止する必要があります。
天然素材由来で安全性の高い薬剤ではありますが
この出血傾向が続くことには注意が必要だと考えます。