ポリオ

国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦 ポリオ生ワクチンへの鎮魂
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120724/bdy12072403070000-n1.htm



9月からポリオの予防接種が
これまでの生ワクチン(OPV)から不活化ワクチン(IPV)に切り替わる。
生ワクチンは定期接種としての役割を終え、表舞台から消えることになる。
ポリオは天然痘に次いで地球上からの根絶が目指されている。
多くの子供たちに生涯にわたる主に下肢のまひを残すだけではなく
呼吸筋のまひにより患者の5〜10%は死に至ることがある
子を持つ親にとって恐怖の病気だからだ。
この病気は今でも治療法はないが、数滴の生ワクチンで防げる。


1960年、日本で年間五千数百例のポリオ患者が発生した。
当時、国内ではポリオワクチンはまだ導入されておらず
翌年、国は生ワクチンの緊急輸入を決断した。
これによって多くの子供たちがポリオから免れるようになり
80年を最後にわが国からポリオという病気は消えた。


生ワクチンは経口接種のため注射器がいらず医師でなくとも容易に投与できる。
ゴミも出ない。そして安い。
ポリオ根絶までもう一歩まで来ているが
戦争や貧困はポリオ根絶の妨げになっており
ポリオの免疫が低下した地域では
流行国からのポリオウイルスの侵入により
ポリオの流行が突然生じたりすることがある。
これが非流行国でもポリオワクチンをやめられない理由だ。


ポリオの予防に大きな貢献をした生ワクチンには、一方では極めてまれながら
副反応としてワクチンウイルスによるまひが生ずることも知られている。
ほとんどが1回目の投与の時で
おおよそ100万人前後に1人のまひ(VAPP)が発生する。
日本では年間およそ120万人が出生しているので
年間1人あるかないかのVAPPが発生していることになる。
ポリオがわが国でこの三十数年間発生していないのは
ポリオに対する免疫が高い水準に保たれているからである。


一方ポリオ根絶を達成した国では、ポリオの免疫を高く維持しながら
VAPPの発生をもゼロにするために、不活化ワクチンに切り替える国が増加している。
日本も先進国ではやや遅ればせながらではあるが
この9月から不活化ワクチンへの切り替えが開始される。
おそらくは11月ごろには導入されるであろうジフテリア・百日ぜき・破傷風(DPT)
と不活化ワクチンを混合した4種混合ワクチンの登場によって、さらに本格化することになる。