外用抗真菌薬

水虫治療 常識のウソ
「外用抗真菌薬はどれも同じ効果」じゃない!
常深祐一郎先生(東京女子医大皮膚科講師)
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/tsunemi/201207/525935.html

問題1

次の外用抗真菌薬のうち、足白癬の治療に最も適切なのはどれでしょうか。
いずれの薬剤も、足白癬に適応があります。
(1)ニゾラール(一般名 ケトコナゾール)
(2)アスタット(一般名 ラノコナゾール)
(3)マイコスポール(一般名 ビホナゾール)


白癬菌に効果の高い外用抗真菌薬
・ルリコナゾール (ルリコン)
・ラノコナゾール (アスタット)
・テルビナフィン (ラミシール
・リラナフタート (ゼフナート)
・ブテナフィン (メンタックス、ボレー)
・アモロルフィン (ペキロン)


ビホナゾール(商品名マイコスポール)は
1日1回塗布でよく、白癬、カンジダ、マラセチア(癜風菌)の
どの菌種にも適応があるということで、世に出た当時は注目を集めましたが
薬効面ではその後に登場した薬剤に追い抜かされてしまいました。


ケトコナゾール(ニゾラール)も有名な外用抗真菌薬で
白癬、カンジダ症、癜風などに適応がありますが、白癬に対する効果はかなり低いです。
ただしケトコナゾールは、カンジダやマラセチアに対しては抜群の効果を発揮します。


というわけで、問題1の正解は、(2)アスタットでした。

問題2

次に示した外用抗真菌薬のうち、爪白癬に適応を持つのはどれでしょうか。
(1)ルリコン液(一般名ルリコナゾール)
(2)ルリコンクリーム(一般名ルリコナゾール)
(3)ゼフナート外用液(一般名リラナフタート)
(4)ゼフナートクリーム(一般名リラナフタート)


伝統的に行われている「足にはクリーム、爪には液」
という使い分けに意味はあるのでしょうか? 
「爪には液」なのは、液の方が浸透がよい気がするからでしょう。
しかし実際には、「爪には液」にエビデンスはありません。


また、これもしばしば誤解されていますが、液とクリームはいずれも
足白癬や体部白癬などには適応がありますが、爪白癬には適応がありません。
そもそも、外用抗真菌薬には、どの剤形も爪白癬の適応はありません。
爪白癬は、抗真菌薬の内服を行わなければ治癒は望めません。
と考えれば、クリームと液を塗り分ける理由がないことがお分かりいただけるでしょう。


逆に、塗り分けることにはデメリットがあります。
まず、処方される薬剤数が増えますので
特に高齢者では、どれがどの部位用の薬かが分かりにくくなります。
次に、2剤形を塗り分けると、塗る手間が増えます。
1つの容器のふたを開けて手に出して塗って、その容器のキャップをしめて
もう1つの容器を開けて手に出して塗って、容器をしめる、という作業になるからです。
手間がかかると、当然アドヒアランスが低下します。
水虫の治療では毎日薬を塗布しなければなりませんから、アドヒアランスの低下は大きな問題です。


さらに、2剤形を塗り分けると塗り残しができやすくなります。
足白癬治療においては
足底、趾間、趾背、足縁、アキレス腱部までくまなく塗ることが必要です。
塗り残しは、避けなければいけません。


1剤で、足も爪も外用するようにすれば、薬の数も減らせて処方する医師の手間も減り、患者の理解も容易になります。
そして、1剤形で全体に塗布すれば
塗布時の患者の手間も減って、塗り残しも減ります。
その際の剤形は、クリームでも軟膏でも液でも、どれでも構いません。
しっとりしていた方が良いという人や液が
垂れて塗りにくいという人にはクリーム
刺激を受けやすそうな部位がある人には軟膏
たつきを嫌う人や素足で生活する人には液、といったように選択します。


・剤形数は1つがよい。
・足も爪も同じ剤形で全体に塗布する。
・クリーム、軟膏、液は患者の好みや病変の状態によって決定する。
ですので、問題2は「どの薬剤も爪白癬に適応はない」が正解でした。