田辺三菱、タバコの葉からインフルワクチン 1カ月で製造

田辺三菱、タバコの葉からインフルワクチン 1カ月で製造
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ22IL7_S6A220C1TI1000/



田辺三菱製薬
タバコの葉を使ってつくるインフルエンザワクチンを2018〜19年度にも実用化する。
鶏卵でウイルスを培養する従来方法で半年かかる製造期間を1カ月に短縮する。
年ごとに流行する型が変わる季節性インフルに素早く対応できる。
ウイルスを使わないため、投与時の感染リスクも抑えられるとみている。
ワクチンの効率的な製造技術として広がる可能性もありそうだ。


年内をめどに医薬品の最大市場の米国で最終段階の臨床試験に入る。
米国のインフルワクチン市場は5千億円以上とされる。
田辺三菱は「まず米国で展開し、採算性が合えばアジアでも検討していく」
(三津家正之社長)方針だ。


インフルワクチンの製造は鶏卵を使ってウイルスを培養するのが一般的。
ウイルスが人の体内で働かないよう不活化と呼ぶ処理をして接種し、抵抗力をつける。
昆虫の細胞などを使って培養する方法もあるが、製造に3カ月程度かかる。


田辺三菱は13年に買収したカナダのメディカゴ社の製造技術を使う。
タバコに特定の遺伝子を組み込み、抵抗力をつけるために必要な成分をつくらせる。
タバコは安価で成長が早く、葉の収量も多い。
葉を刈り取って精製すれば、短期間でワクチンをつくれる。


米国、カナダで安全性や有効性を確かめる第2段階の治験がほぼ終了。
年内にも第3相と呼ぶ最終治験に進む見通しだ。メディカゴ社はカナダに工場を持っている。


短期間で大量にワクチンをつくれれば、
世界的大流行(パンデミック)が起きた時により多くの人にワクチンを供給できる。
ウイルスを使わないため感染・増殖の危険性も低いとされる。
植物工場などでつくるため品質管理がしやすく、生産コストも低減しやすい。


田辺三菱は阪大微生物病研究会と組み国内でインフルワクチンを販売しているが、
日本では製造方法や成分など製剤基準が厳格に決められている。
新たな手法は遺伝子組み換え技術を使うことなどから、
国内では基準改定が必要になり実用化に時間がかかる。
そのため治験などで規制当局との調整が進んでいる米国で事業化を先行させる。


同社は昨年、20年度までに米国売上高800億円をめざす中期経営計画を策定。
インフルワクチンは米国市場開拓の柱となる製品の一つで、
年間数百億円の売り上げを見込んでいる。


タバコの葉を使った手法で、致死率の高い強毒性の鳥インフルや、
中国などで感染が相次いだ「H7」と呼ぶ新型インフルのワクチンの治験も進行中だ。
インフル以外でも重篤な下痢などを引き起こすロタウイルス
狂犬病ウイルスなどのワクチンも開発している。


▼インフルエンザウイルス 日本で年1000万人が感染し、
間接的原因も含めると年1万人が死亡している。
世界では同25万〜50万人が死亡していると推計されている。
毎年のように変異を続け世界的大流行(パンデミック)を引き起こすこともある。
2009年の新型インフルパンデミックでは、
日本は国産ワクチンの製造が間に合わず海外から緊急輸入した。