ルボックス × テオドール

抗うつ剤とキサンチン製剤の相互作用
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7


◆Question

24歳男性
最近、ストレスが多く、気分もふさぎがちであることを先生に話しました。
すると、先生は、「今日から気分を楽にする飲み薬を1種類追加しましょう。
ただ、飲み合わせの影響があるため、喘息のお薬の量を減らしておきますね」
と言われました。


《処方せん》
ルボックス錠25 2錠
 1日2回 朝夕食後 30日分
テオドール錠50mg 2錠
 1日2回 朝・就寝前 30日分
ほか
※今回、ルボックスが追加された。
前回まで、テオドールが1日300mgで処方されていた。

◆疑義照会

今回ルボックスが新規に処方され
前回まで1日300mgだったテオドールが100mgに減量されていました。
ルボックスの添付文書の記載に沿ってテオドールを3分の1に減量されたと思いますが
これはルボックスが1日100mg投与された場合の値であり
これよりも少ない投与量の場合はテオドールが有効血中濃度に到達しない恐れがあります。
ルボックス1日50mg投与の場合ですと、テオドールを2分の1程度つまり150mgに減量し
投与日数を短くするのが妥当と思われますが、いかがでしょうか。

◆解説

テオドールの用量が不適切である。
処方医はルボックスと併用する場合、テオドールを3分の1に減量するようにとの添付文書の記載に従ったと思われるが、これはルボックスを1日100mg投与した場合であり、ルボックスの用量が変われば、テオドールを減量する割合も変わることを考慮する必要がある。


 フルボキサミンは CYP1A2、CYP3A4、CYP2D6、CYP2C9を阻害し、中でもCYP1A2を強く阻害することが知られている。よって、主にCYP1A2により代謝されるテオフィリンとフルボキサミンを併用した場合、一方の血液中濃度が上昇することが予想される。実際、両剤の併用によりテオフィリンの血液中濃度が大きく上昇することが報告されている。このため、それぞれの添付文書において両剤は「併用注意」とされており、フルボキサミンの添付文書には、「テオフィリンのクリアランスを3分の1に低下させることがあるので、テオフィリンの用量を3分の1に減量するなど、注意して投与すること」との具体的な記載がある。


 この記載は、製造元のソルベイ社が健常人を対象に行った研究結果に基づいている。この研究で、フルボキサミン1日100mgとテオフィリン375mgを併用したところ、テオフィリンの血液中濃度が約3倍になった。ただし、この時のフルボキサミンの用量が1日100mgであることに注意する必要がある。CYP阻害剤のフルボキサミンの用量が変われば、併用薬剤(CYPの基質薬物)の血液中濃度の上昇率も変化するからである。今回のケースでのフルボキサミンの用量は1日50mgであり、処方医はそのことを考慮せず、添付文書の記載に従い、テオフィリンの用量を3分の1に減量したものと思われる。このままでは、テオフィリンの血液中濃度が有効域から外れ、治療効果が得られなくなる恐れがある。