プラビックス

笹嶋勝「クスリの鉄則」

プラビックス:見落とされがちな短所と危険な相互作用

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201010/517228.html


クロピドグレル(プラビックス)は、チクロピジン(パナルジン)に代わる薬として
広く使用されています。チクロピジンと比較した際のメリットは大きいのですが
クロピドグレルならではの短所もあります。こちらもきちんと押さえておく必要があるでしょう。

チクロピジンの長所

チクロピジンは、抗血小板剤として非常に多くの患者に使用されていました。
しかし、投与初期に重篤な肝障害、顆粒球減少、血栓性血小板減少性紫斑病などの
重篤な副作用が現れることがあり、2度も緊急安全性情報が出されています。


クロピドグレルは、効果は同等ですが
これらチクロピジン重篤な副作用の発現頻度がはるかに少ないというメリットがあります。
ですので、添付文書上も、投与開始後2週間ごとの血液検査が義務付けられていません。

クロビドグレルは、日本人ではあまり効かない人がいる?

クロピドグレルは吸収されたあと、二つの経路で代謝されます。
エステラーゼによる代謝経路と、チトクロームP450(CYP)が関与する代謝経路です。
エステラーゼで代謝されたクロピドグレルは、そのまま失活してしまうので薬効を示しません。
薬効を示すのは、CYPによって代謝された場合です。
クロピドグレルは、CYPによって2段階に代謝された後、活性代謝物になります。


この活性化される過程に、CYP2C19が重要な役割を果たしています。
日本人には、15〜20%くらいの割合で
CYP2C19のpoor metabolizer(PM:代謝の遅い人)がいます。
そして、この2C19のPMは、クロピドグレルへの反応性が悪く
心血管イベントが多いという研究結果が、2006年に初めて報告されました。


現時点では、CYP2C19の代謝速度の個人差を手軽に調べる方法はありませんし
モニタのしようがないのですが
クロピドグレルが、すべての人に同じように効果が現れるわけではない
ということは、頭に入れておく必要があるでしょう。

見落とすと危険な相互作用

上記のように、クロピドグレルはCYP2C19で活性体になるプロドラッグであることから
CYP2C19に影響を与える薬剤との相互作用が問題になります。


最近は、CYP2C19を競合的に阻害するPPIとの相互作用が注目されています。
FDAの報告では、クロピドグレルとオメプラゾールの併用により
クロピドグレルの抗血小板作用は減弱するとされています。
具体的には、クロピドグレル単独群に比べると、オペプラゾール併用群では
活性代謝産物濃度が約45%低下し、血小板への効果が約47%減弱することが示されており
FDAは2009年11月、クロピドグレルとオメプラゾールの併用は避けるべきと勧告を出しています。


クロピドグレルは、低用量アスピリンと併用することが多い薬剤であるため
PPIとはしばしば併用されます。
クロピドグレルの添付文書では、オメプラゾールは併用注意になっていますが
私の会社では併用禁忌扱いで疑義照会するように指導しています。