シックデイ・ルール

【質問】

経口薬服用中の糖尿病患者が熱を出しました。
どんな点に注意すればよいですか。

【回答】

糖尿病患者が治療中に発熱、下痢、嘔吐などを来す
または食欲不振のため食事が取れないときを「シックデイ」と呼ぶ。
このような状態では、2型糖尿病で血糖コントロールが良好な患者であっても
著しい高血糖を来したり、糖尿病性ケトアシドーシスに陥ることがある。
(diabetic ketoacidosis:DKA
1型糖尿病患者ではDKAの危険性がさらに高いので、特別の注意が必要である。

1型糖尿病におけるシックデイ・ルール

1型糖尿病の場合
「シックデイであっても、インスリン注射は継続すること」
が絶対的なルールである。
1日4回以上のSMBG(血糖自己測定)を実施する。


1)食事摂取が通常量の2分の1以上、可能な場合
 血糖値200mg/dL以上−超速効型インスリン10%増
 血糖値300mg/dL以上−超速効型インスリン20%増
 血糖値400mg/dL以上−超速効型インスリン30%増
 血糖値 80mg/dL以下−超速効型インスリン10%減


2)食事摂取量が通常の3分の1以下のとき
通常量の2分の1のインスリンは必要であり
その量に、SMBGの測定結果に応じ上記の量を追加する。
例えば、通常、ノボラピッドを毎朝16単位注射している患者で
ほとんど食べられない場合には、8単位を基本とし
SMBGで朝の血糖値が320mg/dLなら20%追加して、計10単位を注射する。


3)睡眠前の中間型インスリンは、食事量に関係なく注射する。
睡眠前血糖値が400mg/dL以上のときには
超速効型インスリン2〜4単位を追加注射する。


4)食事がほとんど取れないとき、SMBG高値が続くとき
発熱、疼痛、嘔吐、下痢などが強く24時間以上続くときには
すぐに救急外来を受診する。

2型糖尿病におけるシックデイ・ルール

1)吐き気、嘔吐などで食事摂取ができるか分からないときは
インスリン注射を「食後」注射に変更する。


2)食事摂取量が通常の半分以上なら、インスリンは通常量を注射し
食事摂取が半分以下なら、インスリンは2分の1量を注射する。


シックデイ時の内服薬に関しては、以下のようにする。
1)α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬は
シックデイで消化器症状がある間は服薬を中止する。


2)インスリン分泌促進薬(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬)に関しては
食事摂取量が半分程度なら半量とし、摂取量が3分の1以下なら服用を中止とする。


シックデイ・ルール(「糖尿病治療ガイド2006-2007」による)

1.シックデイの時には主治医に連絡し指示を受けるよう、平素より患者に指導する。
インスリン治療中の患者は、食事が取れていなくても
自己判断でインスリン注射を中断してはならないこと
また、発熱、消化器症状が強い時には必ず医療機関を受診するよう指導する。


2.十分な水分摂取により脱水を防ぐように指示する
(来院した患者には点滴により生理食塩水1〜1.5L/日を補給する)。


3.食欲がない時は、日ごろ食べ慣れていて口当たりがよく、消化のよい食物
おかゆやジュース、アイスクリームなど)を選び、できるだけ摂取するように指示する
(絶食しないようにする)。特に、糖質と水の摂取を優先する。


4.SMBGにより血糖値の動きを3〜4時間に1回ずつ測定し
血糖値200mg/dLを超えてさらに上昇の傾向がみられたら
その都度、速効型または超速効型インスリンを2〜4単位追加するように指示する。


5.来院時には必ず尿中ケトン体の測定を行う。



reference
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/iwaoka/200606/500654.html
http://www.dm-school.net/dmcl/dmcl18.pdf