肺がん治療、 相次ぐ新薬

肺がん治療、タイプごとに
相次ぐ新薬、選択肢増え効果改善 副作用対策がより重要に
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タグリッソは、
がんの増殖に関わる「EGFR」遺伝子が変異した患者が飲む錠剤だ。
肺がんの80~85%を占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、
手術ができないか再発した人が対象。
がんの増殖を促す酵素の働きを邪魔する分子標的薬で、
第3世代と呼ぶ最新の治療薬だ。

1錠(80mg)の値段は約24000円で、
国の保険や高額療養費制度を使うことで
毎月の患者の負担額は3万円強~10万円弱になる。

イレッサ」など
第1~2世代の分子標的薬を使うと、
がん細胞の表面で薬がくっつく部分の形が変わり、
1年程度で次第に薬が効かなくなる。

だが、タグリッソはこの耐性が付いたがんの一部にも効く。
18年8月から、1回目の治療で使えるようになった。
分子標的薬に多い下痢や発疹などの副作用も、比較的少ないとされる。

国立がん研究センター呼吸器内科の後藤医師は
「最近は、ほぼ全員の患者が初回からタグリッソを使っている。
副作用が少ないのも特徴だ」と話す。

タグリッソを使う前には、
肺がん細胞のEGFR遺伝子変異の有無を調べる必要がある。
がん組織や、採血した血液中のがん細胞のDNAを抽出して調べる。

EGFR遺伝子の変異を持つ非小細胞肺がんの
主力の治療薬となったタグリッソだが、
使い続けるうちにがんは遺伝子の変異を繰り返して
薬が効かなくなる耐性がでるのは同じ。
耐性が出た患者は、副作用が強い化学療法を受けることになる。

そこでまず第2世代以前の分子標的薬を使い、
耐性が生じた後にタグリッソに切り替える動きも出ている。
最初からタグリッソを使うよりも、
分子標的薬で治療できる期間を長くできる可能性がある。
ファイザーが3月に発売した「ビジンプロ」は
第2世代の薬で、タグリッソの前に使う薬の有力候補だ。

ビジンプロの治験に参加した
神奈川県立がんセンター呼吸器内科の加藤医師は
「がんの悪化を防いだ期間は14.7カ月と、イレッサの9.2カ月より長かった」
と話す。
1錠あたりの値段は1万円強で、
国の保険や高額療養費制度を使うことで毎月の患者の負担額は
3万円強~10万円弱になる。

一方、分子標的薬で狙うEGFRなどの
数個の遺伝子に変異が無い非小細胞肺がんの患者の治療法も進化している。
初回の治療からがん免疫薬などを使う。

「PD-L1」分子を持つがん細胞が多い人は、
「キイトルーダ」を単独か抗がん剤との併用で使うか、
「テセントリク」を化学療法と併用で使う。

「PD-L1」分子が少ない人は
「キイトルーダ」か「テセントリク」を従来の抗がん剤と併用するか、
従来の抗がん剤だけを使うかなど、使い分けが進んでいる。

2002年にイレッサが登場するまでは、
プラチナ製剤やタキサン系という従来型の化学療法が肺がん治療の中心だった。
免疫力が下がり髪の毛が抜けるなどの副作用が強いだけでなく、予後も悪かった。
1990年代の肺がん患者の5年生存率は男性で2割強と、
全てのがんの半分程度にとどまった。

製薬各社は予後が悪く患者数が多い肺がん治療薬の開発に注力。
その結果、肺がんはがんのタイプごとに治療の個別化が進んだ。
ただ、患者の生存期間が延びた分、
下痢や発疹、肺炎などの副作用への対応が重要さを増している。
腫瘍内科医や皮膚科医など、
専門が異なる医師や看護師、薬剤師の連携が大事になる。