小野薬品 

15年間諦めなかった小野薬品 がん消滅、新免疫薬
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78790300T21C14A0X11000/?dg=1



◆「オプジーボは革命的なクスリ」と高評価
「がん研究、治療を変える革命的なクスリだ」。
慶応義塾大学先端医科学研究所所長の河上裕教授は
9月から日本で発売が始まった小野薬の抗PD―1抗体「オプジーボ」OPDIVO
(一般名ニボルマブ)をそう評価する。


ニボルマブは難治性がんの1つ悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として
小野薬とBMSが共同開発した新薬だ。
がんは体内の免疫に攻撃されないように免疫機能を抑制する特殊な能力を持つ。
ニボルマブはこの抑制能力を解除する仕組みで、
覚醒した免疫細胞によってがん細胞を攻撃させる。


世界的な革命技術として、米科学誌サイエンスの2013年の
「ブレークスルー・オブ・ザ・イヤー」のトップを飾った。
今や米メルク、スイスのロシュなど世界の製薬大手がこぞって
この仕組みを使った免疫薬の開発を加速させている。


悪性度が高いメラノーマは5年後の生存率は1割前後という極めて危険ながんだが、
米国、日本での臨床試験では
「増殖を抑えるだけでなく、がん細胞がほぼ消えてしまう患者も出た」(河上教授)。


米国での他の抗がん剤と比較する治験では既存の抗がん剤を取りやめ、
ニボルマブに切り替える勧告も出たほどだ。
肺がんや胃がん食道がんなど他のがん種に対する治験も進んでいる。


◆年間数百億円のロイヤルティー効果
足元の業績が低迷するなか、ニボルマブ効果で小野薬の市場評価は高まっている。
昨年10月時点で6000円前後だった株価は今年に入って急騰。
23日の終値は9340円とわずか1年足らずで3000円以上伸びた。
アナリストも「今後数年でロイヤルティーだけで年数百億円は堅い」と分析する。
小野薬の相良暁社長も「10年先を支える薬になるだろう」と自信をみせる。


ただメルク、ロシュなどが同じ仕組みの抗PD―1抗体の治験を拡大しており、
国際競争に巻き込まれる可能性も高い。
一方で他の製薬大手から小野薬がM&Aの標的となる懸念もある。
その意味で同社が置かれている環境は必ずしも楽観視できない。


がんの新たな治療法の扉を開けた小野薬。
日本発の免疫薬に世界の目が注がれている。