アルツハイマー病の強力なリスク因子は「運動不足」

アルツハイマー病の強力なリスク因子は「運動不足」

日本の65歳以上の約7人に1人が認知症患者と推計されています。
正常と認知症の中間の状態とされる軽度認知障害も合わせると、
65歳以上の約4人に1人が認知症またはその予備軍となっています。
「特にアルツハイマー認知症は、様々な要因の中でも
運動不足が強力なリスク因子だとする研究報告があります」
そう話すのは、筑波大学大学院スポーツ医学専攻教授の久野譜也氏です。

では、運動習慣は脳にどのような影響をもたらすのでしょうか?

「運動で体を動かすと、
筋肉組織からイリシンという物質が分泌されます。
イリシンは血流に乗って脳に運ばれると、
脳内でBDNFと呼ばれるたんぱく質の分泌を促します。
BDNFは『脳由来神経栄養因子』と呼ばれ、
脳の神経細胞の働きを活発にして、細胞の新生や再生、
シナプスの形成を促すことが分かっています。
つまり、筋トレで筋肉を刺激し、
有酸素運動で血流を促すことで、脳の活動性を高め、
認知症の予防につながることが示唆されているのです」(久野氏)

「十数年前には、指先を動かすなど細かな動作を行うと、
脳を活性化できるといわれていましたが、
近年では、大きな筋肉群を動かしたほうが
脳への刺激が高まるといわれるようになってきています」
と久野氏は話します。
太もも(大腿四頭筋ハムストリングス)など
下半身の大きな筋肉を鍛えると、転倒を予防し、
基礎代謝を維持・向上できることが知られていますが、
それだけでなく、認知症の予防につながることも期待できるのです。

「将来認知症になるリスクを下げるためにも、
筋トレと有酸素運動を習慣にして、
積極的な外出を心がけてほしいと思います。
積極的に出かけることで、
新たな発見や人との交流も生まれ、
脳をさらに活性化することができます」
と久野氏はアドバイスしています。