武田、和光純薬を売却

武田、事業選別大胆に 重要子会社を売却
http://www.nikkei.com/article/DGXLNSE2INK01_S6A101C1000000/


武田薬品工業選択と集中を進める。
創業家との関係も深い重要子会社、和光純薬工業
富士フイルムホールディングスに売却する一方、
カナダの製薬大手と胃腸薬事業の買収交渉に入った。
外資製薬大手から迎えたクリストフ・ウェバー社長の下、
かつてなら考えられない構造改革が進む。M&A(合併・買収)で
巨大化する世界の大手との差を縮めたいウェバー社長の危機感がにじむ。


「まさか和光純薬まで売るとは。外国人社長だからできることだ」。
武田の関係者は口をそろえる。
売却する和光純薬は1922年に武田の化学薬品部門が分離し、武田化学薬品として誕生。
47年に現社名に変わり「武田」の名前は外れたが、会社のロゴも武田とうり二つだ。
株主には武田国男氏ら創業一族が名を連ねる。
そんな会社の売却は、しがらみにとらわれないウェバー流経営を印象づける。


武田がGSKからウェバー氏を社長に迎えたのは2014年6月。
15年4月からは最高経営責任者(CEO)を兼任する。
現在は唯一、代表権を持つウェバー社長が采配を振るう。


非中核事業を切り離すため、15年12月には
呼吸器薬の事業を英製薬大手に売却することを決定。
今年4月には特許切れ薬の事業をイスラエルの後発薬世界大手との合弁に移した。


聖域無き改革で重要子会社を手放す一方、重点領域を強くする巨額買収にも動く。


2日には、
カナダのバリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルと、傘下の
米サリックス・ファーマシューティカルズの買収で交渉していることが明らかになった。
実現すれば買収総額は100億ドル(約1兆400億円)規模となる見込み。
武田にとっては11年に1兆1000億円を投じたスイスの
ナイコメッド買収に肩を並べる大型M&Aだ。


サリックスは胃腸薬の大手。
武田が研究開発の重点分野の一つと位置づける消化器疾患向けの医薬品を扱う。
過敏性腸症候群(IBS)の治療薬など大型薬を抱える。
米国でIBSに悩む人の数は約3500万人と総人口の1割を占めるとされ、
今後の成長が期待できる。


ウェバー社長が積極的に動くのは、
収益の源泉となる新薬を継続的に生み出す体制を作るためだ。
画期的な新薬の開発には1000億〜2000億円もの開発費が必要というのが通り相場。
そのうち大型薬に育つ可能性は3万分の1ともいわれ、企業の規模がものを言う。
また、バイオベンチャーが有望な大型新薬の技術やタネを持つことも多い。
世界の大手は多額の資金を投じたM&Aによって次々とこうした企業を手に入れている。


武田の連結売上高は1兆8千億円(16年3月期)と国内首位だが、
ノバルティスやファイザーなど約5兆円の売り上げがある欧米大手とは大きな差がある。
競争が激化する世界市場で勝ち抜くために、ウェバー改革が続く。