ミノマイシン

RA患者に処方された抗菌剤の効能
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7


◆Question

関節リウマチで20年以上治療を受けてきた46歳の男性が、
総合病院のリウマチ科を受診した帰りに処方せんを持って薬局を訪れ、
次のような質問をしました。


これまでにいろいろな薬を飲んできましたが、いまだに関節の痛みが取れません。
前回までの薬もあまり効かないようなので、
今日から別の薬を出してみると先生に言われました。
どのような薬なのでしょうか。副作用も心配です。


処方せん


アザルフィジンEN錠(500mg) 2錠

ミノマイシン錠100mg 2錠

ボルタレン錠(25mg) 2錠

ムコスタ錠100 2錠

  分2 朝夕食後 30日分
プレドニン錠5mg 2錠

  分1 朝食後 30日分
マイスリー錠5mg 2錠

  分1 就寝前 14日分


※前回まで、リウマトレックスカプセル2mgが週4カプセル処方されていたが、
今回からミノマイシン錠に変更された。
※上記のほか、リマチル、リドーラ、メタルカプターゼの服用歴があり、
滑膜切除術を3回施行されている。

◆服薬指導

ミノマイシンというお薬は、
もともとは抗生物質として使われてきたお薬ですが、
近年、抗炎症作用を持つことからリウマチにも有効であるという報告が増えてきています。
一般に、リウマチのお薬は、患者さん によっては効かなかったり
飲み続けるうちに効果が弱くなったり、
副作用のために飲み続けられなかったりすることがあります。
Bさんもこれまでにいろいろな種類のお薬を飲まれてきたようですが、
なかなか症状が良くならない とのことですので、主治医の先生は、
ミノマイシンの新しい効果に期待したのではないでしょうか。
ミノマイシンは、ほかのリウマチのお薬よりも安全性が高いとされていますので、
副作用についてはあまり心配されなくても大丈夫です。

◆解説

関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis;RA)は、多発する関節炎を主徴とする全身性の炎症性疾患である。主な臨床症状は関節の腫れや痛み、こわばりで、炎症が持続すると関節の破壊・変形が進み、著しい機能障害を引き起こす。

 RAは20〜40歳代での発症頻度が高く、男女比は1:4と女性に多い。原因は解明されていないが、特定の遺伝的素因に、何らかの環境因子(ウイルス感染など)が加わって免疫異常が生じ、関節の炎症を引き起こすと考えられている。

 現在、RAの治療には、抗リウマチ剤としてメトトレキサート(商品名:リウマトレックスほか)、注射金製剤(商品名:シオゾール)、ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)、ブシラミン(商品名:リマチルほか)、サラゾスルファピリジン(商品名:アザルフィジンENほか)などが使われている。しかし、これらの抗リウマチ剤には、①事前に予測できない無効例が存在する②副作用のために服用継続が困難となる場合が少なくない③長期投与に伴い効果が減弱・消失することがある――といった問題点がある。

 今回処方された塩酸ミノサイクリン(商品名:ミノマイシンほか)は、テトラサイクリン系の抗生物質だが、本来の静菌作用に加えて抗炎症作用を併せ持つことがわかっており、近年、RAに対しても有効であるとの報告が散見されるようになってきた1)〜3)。

 国内のある研究3)では、3種類以上の抗リウマチ剤が無効、または治療抵抗性となったRA患者15例に、ミノサイクリン200mg/日を投与した。「朝のこわばりの持続時間」などの4項目から算出するランスバリー活動性指数を用いて治療効果を評価したところ、投与開始後6カ月の時点で、著効(指数が50%以上改善)が2例、有効(20%以上改善)が6例で、有効以上が全体の53%を占めた。これら8症例では、比較的早期(投与開始後1カ月)から効果発現が認められ、全例で効果が1年以上持続した。副作用は2例に悪心、1例に上腹部痛とめまいがみられたが、減量または中止により速やかに消失した。

 ミノサイクリンのRAに対する作用機序は、他の抗リウマチ剤と同様に必ずしも解明されていない。当初はRAの病態に細菌感染が関与するという病因論に基づいて、ミノサイクリンの持つ静菌作用が注目されていたが、現在は、コラゲナーゼ産生抑制作用、活性酸素除去・産生抑制作用、リンパ球増殖抑制作用、多核白血球遊走能・貪食能抑制作用、ホスホリパーゼA2活性化抑制作用、TNF(腫瘍壊死因子)-α産生抑制作用などが関与しているとみられている。他の抗リウマチ剤と比べて副作用が少なく、安全性が高いことも特徴の一つである。

 こうした知見を基に、近年、複数の抗リウマチ剤が無効あるいは使用不可能な患者に対して、ミノサイクリンの投与を試みる医師が出てきており、Bさんの主治医も、同様の理由でミノサイクリンを処方したものと思われる。文献報告では、1日用量が200mgに設定される頻度が高いようである。