食道裂孔ヘルニアとは

医療相談室
食道裂孔ヘルニアとは
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=103861
◆Question
健康診断を受けたところ、食道裂孔ヘルニアと分かりました。
どのような病気で、どのような治療法がありますか。心配しています。(68歳女性)


◆Answer
胃酸逆流が食道炎の原因に
高橋信一 杏林大学医学部第三内科教授


まず、食道裂孔ヘルニアは病気ではありません。ご安心ください。
上部消化管の内視鏡検査で普通に見られる一つの内視鏡所見です。
ただ、逆流性食道炎の患者さんでは病因になるので問題になっています。


肺のある胸郭は、内部の圧力が外部より低く、
胸が大きく膨らむと肺が膨らみ、空気を自動的に吸うこととなります。
食道は、この胸郭から「食道裂孔」という穴を通過して
下にある腹腔ふくくうに通じています。


食道裂孔ヘルニアは、加齢などでこの穴を締め付ける圧力が緩み、
腹腔部分を通る食道が上の胸郭の方へ出てしまう状態のことを言います。


普通は何ら自覚症状がありません。
しかし、胸やけ、胸痛などが生じる逆流性食道炎は、食道裂孔ヘルニアが原因となります。
食道が胸郭へ滑り出ると、食道と胃のつなぎ目が緩み、胃酸が食道内に逆流することから、
食道粘膜を傷つけ食道炎を引き起こすからです。


逆流性食道炎の治療は、逆流する胃酸の濃度を抑える薬が第一選択です。
消化管運動を高める薬なども用いられます。腹圧を減らすため、肥満を解消し、
おなかを圧迫する帯やコルセットも避けるようにします。
寝ている時は、座布団などで上半身を少し上げるようにします。


食道裂孔ヘルニアの積極的な治療法はありませんが、
難治性の逆流性食道炎の原因となっている場合は、
胃・食道接合部を縫い合わせる手術も開発されています。


(2014年8月31日 読売新聞)