抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン

血栓薬の休薬基準が緩和
内視鏡下生検やバルーン内視鏡も休薬せず可能に
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201209/526678.html

今年7月、内視鏡処置時の抗血栓薬の休薬に関する新しいガイドラインが公表された。
血栓薬を継続したままできる処置の範囲を広げ
内視鏡下生検や消化管ステント留置なども休薬せずに施行してよいとした。


今回公表されたのは、「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」。
2005年に日本消化器内視鏡学会が作成した
内視鏡治療時の抗凝固薬、抗血小板薬使用に関する指針」の改訂版に当たる。
日本消化器内視鏡学会だけでなく
日本循環器学会や日本神経学会など6学会が合同で作成した。


新しいガイドラインでは、内視鏡処置の内容を出血リスクによって
「観察」「生検」「出血低危険度」「出血高危険度」の4段階に分類。
処置ごとの抗血栓薬の休薬の必要性や、再開時期などを12項目の文章でまとめ
それぞれの推奨度を示した。


ガイドラインのポイントは、服用する抗血栓薬が1剤の場合
生検や出血低危険度の処置(バルーン内視鏡、消化管ステント留置など)は
血栓薬を休薬せずに施行してもよいとしたことだ(表1)


05年の指針では、生検や消化管ステント留置などでもアスピリンは3日
チエノピリジン系薬のチクロピジンは5日(両剤併用の場合は7日)
ワルファリンは3〜4日間休薬するとしていた。
このため、内視鏡観察で生検が必要と判断された場合
いったん休薬した後に改めて生検を行う必要があった。


内視鏡下生検などでは、後出血により緊急内視鏡が必要になるケースがあり
従来は抗血栓薬を休薬するのが基本だった。しかし、アスピリンの中止により
心血管イベントや脳梗塞が約3倍に増えたという報告や
ワルファリンの休薬により約1%に血栓塞栓症が生じたとの報告もあり
血栓薬服用者が増えるにつれて休薬のリスクが問題視されるようになってきた。


そこで新しいガイドラインでは血栓塞栓症のリスクを重視し
血栓薬を継続したままできる処置を増やした。
作成委員長を務めた佐賀大消化器内科教授の藤本一眞氏は
「指針が公表された05年に比べ、消化器内視鏡医の手技や技術が向上し
出血が起きても止血できるようになったことも背景の一つだ」と説明する。
近年は歯科でも、適切な止血処置によって出血リスクを抑え
血栓塞栓症リスクに配慮する方針を明確にしている。


また、ガイドラインでは生検時などの休薬について
「休薬なく施行してもよい」との表現にとどめている。
作成委員を務めた東大光学医療診療部長の藤城光弘氏は
「継続したまま行わなければいけないという意味ではない。
出血の起こりやすさは部位や処置などによっても異なるため
症例ごとに継続か休薬かを判断してほしい」と話している。