12%

たばこ対策―業界より健康重視で
http://www.asahi.com/paper/editorial20120612.html#Edit2



国民の健康を守るために喫煙率を下げる。
国としての数値目標がやっと決まった。


2010年の日本の成人喫煙率は
男性32.2%、女性8.4%で、全体では19.5%だ。
それを10年後には全体で12%にする。
先週閣議決定された、がん対策推進基本計画に盛り込まれた数値目標である。


数値目標の設定は
1999年に旧厚生省が喫煙率の半減を掲げようとして以来、何度か試みられてきた。
そのつど、たばこ業界や、それを背景にした議員たちの抵抗で、断念に追い込まれた。
今回、何とか目標を盛り込むことができ、一歩前進であることは間違いない。


だが実は、調査に対し、喫煙者の約4割が禁煙したいと答えている。
12%は、その人たちが望み通り禁煙すれば達成できる目標だ。
この数字に安住せず、たばこ価格の値上げなどの政策を積極的に進めて
喫煙率をさらに下げていくべきだ。


受動喫煙を防ぐ法案が国会に提出されている。
その成立のめどがたたないのも、どうしたことか。



職場での受動喫煙の害から守るため、事業者に対し、全面禁煙や分煙などの
対策を義務づける労働安全衛生法の改正案で、昨年末に閣議決定された。
しかし、与野党議員から「努力目標」でいいのでは、といった意見が相次ぎ
審議に入れないままになっている。


こちらもやはり、最大の反対勢力はたばこ業界である。
先月31日の世界禁煙デー世界保健機関(WHO)が掲げたスローガンは
「たばこ産業の干渉を阻止しよう」だった。


マーガレット・チャン事務局長は
「たばこ産業は毎年約600万人の命を奪う殺人産業」と断じて
業界の圧力を排して対策を進める決意を明らかにした。
ところが日本では、このスローガンを使わなかった。


国内でたばこによる死者は毎年十数万人、受動喫煙による死者は約6800人にもなる。
命を守ることを優先するなら、政府も国会も改めてWHOのスローガンをかみしめるべきだ。


日本で禁煙の法制化が進まない背景に
たばこ産業の健全な発展を目的とする、たばこ事業法の存在がある。
JTの大株主である政府には、たばこにかかる税の収入を確保していきたいとの意向も働く。


廃止も含めて、この法を抜本的に見直す時だろう。
健康を守りたい国民の支持は、間違いなくこちらにある。