ラキソベロン + 牛乳

小児の下剤と混合可能な飲み物とは
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/di/diquiz/ より一部改変

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7

日経DIクイズ 服薬指導・実践篇7


◆Question

生後5カ月の男児を連れた母親
ラキソベロンという薬は、ミルクに混ぜて飲ませても大丈夫ですか。
 うちの母はいつもみそ汁に入れて飲んでいるのですが」


《処方せん》
ミヤBM細粒 1.5g
モニラック・シロップ 15mL
 分3 毎食前 14日分
ラキソベロン液 5mL
 便秘時 1日1回2滴
※今回からラキソベロンが追加された。

◆服薬指導

ラキソベロンというお薬は
腸内細菌に分解されて大腸の運動を刺激し、お通じを改善する作用があります。
液状ですので、いろいろな飲み物に混ぜやすい利点があります。
ミルクに混ぜても特に問題はなく、味も変わりませんので、お試しください。
以前から処方されているミヤBMやモニラックも、ミルクと混ぜても差し支えありません。
ただし、みそ汁については、ラキソベロンと混ぜて飲んだ場合に
お薬の品質に影響がないかどうかを確かめたデータがありません。
お母様には、みそ汁の代わりに、緑茶、紅茶、コーヒー、牛乳、ジュースなど
と混ぜて飲まれることをお勧めしていただけますか?

◆解説

 乳児期は、母乳やミルクが栄養の中心であるため、残渣が少なく、便秘になりやすい傾向がある。母乳栄養児の場合は、母乳不足が便秘の原因となることもある。

 こうした乳児の便秘に対する家庭での対処法として、OTCマルツエキスなどを与えることがあるが、これは発酵作用により便が軟化し、排便が容易になることを期待したものである。離乳が進んでいる場合は、繊維質の多い野菜類や果物類、ヨーグルトなどの摂取も効果がある。オリーブ油やベビーオイルを付けた綿棒で、肛門部を刺激する方法も用いられる。

 しかし、こうした方法でも便秘が解消せず、腹痛、食欲不振、腹部の張り、排便時の苦痛などが生じている場合は、医師による治療が必要になる。

 今回追加されたラキソベロン(一般名:ピコスルファートナトリウム)は、大腸菌叢由来のアリルスルファターゼにより加水分解され、その活性体が腸管の蠕動運動を促進し、水分吸収を阻害することで、瀉下作用を示す。滴剤の場合、嗜好飲料に混合して服用されるケースが多いが、その場合の安定性については、ラキソベロン液と嗜好飲料7品目を混合し、配合変化を調べた試験のデータを参照したい。

 この試験では、緑茶、紅茶、コーヒー、コカコーラ、オレンジジュース、カルピス、牛乳のそれぞれにラキソベロン液を添加し、添加直後、20分後、4時間後において、薄層クロマトグラフ法により配合変化を検討した。この結果、いずれの飲料においても配合変化は認められず、安定であった。このことから、同剤をミルクに混ぜて服用しても、特に差し支えはないと考えられる。

 一方、以前から処方されているモニラック(一般名:ラクツロース)は、ガラクトース1分子と、フルクトース1分子からなる合成二糖類で、経口投与すると無変化のまま大腸に達し、浸透圧作用によって水分を貯留し、便を軟化させる。同時に、腸内細菌によって分解され、生成された有機酸(乳酸、酢酸など)の刺激によって、腸管の蠕動を亢進させ、排便促進効果を示す。

 モニラック・シロップと嗜好飲料4品目との混合試験では、コーヒー、紅茶、牛乳、ミネラルウオーターのそれぞれを、モニラックシロップと15:1の割合で希釈混合し、配合直後と1時間後、6時間後の安定性を見た。この結果、性状、含量、pHの変化に問題は見られなかった。また、同剤を−20℃で凍結後、溶解した場合も、安定性は保たれていた。

 整腸剤のミヤBM酪酸菌製剤)も、芽胞なので一般的に安定性が高く、ジュースやミルクとの混合による影響はないと考えられる。

 以上のことから、今回処方されたいずれの薬剤も、ミルクに混合して服用しても差し支えはないと思われる。ただし、みそ汁における実験データはないので、祖母に対しては、混合は控えるよう指導した方がよいだろう。