Taking On China

クルーグマン、中国に宣戦布告

http://newsweekjapan.jp/newsroom/2010/03/post-51.php


クルーグマンニューヨーク・タイムズ紙の連載コラムで「対中主戦論」をぶち上げた。


中国は人為的に人民元相場を低く固定して世界経済の足を引っ張っている。
アメリカはこれまで中国との正面対決は避けて丁重に説得してきたが
もし中国に米国債を売られたとしてもアメリカは大して困らない。
だから、心置きなく実力行使に出るべきだ。
具体的には、中国製品に25%の対抗関税をかければいい。


中国が米国債を売ってきた場合でも
FRB連邦準備銀行)が国債を買うことで金利上昇を抑えることができる。
ドルの価値は下落するが、輸出競争力は増すのでアメリカはトクをする。
困るのは、保有するドル資産の価値が減ってしまう中国のほうだ。

Taking On China  By PAUL KRUGMAN
http://www.nytimes.com/2010/03/15/opinion/15krugman.html?hp



かくして中国は偉大なアメリカの前にヒザを屈し人民元を引き上げる、
というシナリオだが、すこぶる評判が悪い。
英デイリー・テレグラフ紙は「世界を脅かすノーベル賞学者」という見出しを掲げ
あまりに危険な内容なので最初は風刺かと思ったと書いている。
米証券ユーロパシフィックキャピタル社長のピーター・シフは
ノーベル賞を剥奪すべきだと怒り
米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授のダニエル・ドレズナーは
クルーグマンネオコンに成り下がった、と書いた。
タイム誌や英エコノミスト誌、モルガン・スタンレー(アジア)の
ティーブン・ローチ会長などもこぞって批判した。


たとえばシフは
クルーグマンの提言に従った場合の以下のような終末シナリオを挙げている。

中国が米国債を買わずに他に投資するようになれば
人民元の価値は急上昇し、中国の物価は下落する。
長い間贅沢をお預けにされていた平均的中国人の購買力がついに上昇し
すでに世界最大の人口を誇る中間層の押さえつけられていた消費が爆発する。


アメリカでは、中国からの借金で支えられてきた消費経済が崩壊する。
輸入品を安く買うこともできない。
中国でガソリンや食料品が安くなるのと裏腹に、アメリカでは高くなる。



シフは、中国が(かつての日本のように)輸出で稼いだお金を倹約して
米国債を買ってくれているから今のアメリカがあると言っている。
この歪みを正すには、人民元相場だけでなくアメリカの借金体質も
時間をかけて直していかなければならない、と。
だがクルーグマンのような強硬路線だろうとシフのような軟着陸路線だろうと
このままでは米中逆転は避けられないというのが多くの専門家の本音なのではないか。