「バイアグラは心臓に良い」

バイアグラを服用してはいけない人👇は読まないでください!
https://www.hama1-cl.jp/ed/prescribe_v.html

ED治療薬は心臓に良い!

https://medical-tribune.co.jp/rensai/2023/0227555728/?utm_source=Pickup&utm_medium=email&utm_campaign=mailmag230228
小堀善友先生:プライベートケアクリニック東京 東京院院長

研究の背景:患者の多くは「EDの治療薬PDE5阻害薬は体に悪い」という都市伝説を信じている。その真実は?

周知の事実であるが、勃起不全(ED)に対しては
バイアグラシルデナフィル
レビトラ(バルデナフィル
シアリスタダラフィル)といった
ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害薬が非常に効果的である。
『ED診療ガイドライン』にも掲載されているが
心因性や器質性いずれの原因に対しても
「とりあえず"PDE5阻害薬"を使おう」ということがコンセンサスとなっている。
ほとんど、居酒屋に行って「とりあえずビール」と頼むのと同じノリで、
医師はこれらの薬剤を処方している。
それほどPDE5阻害薬はEDには極めて有効かつ安全に使える薬剤なのだ。

しかし先日、とある週刊誌を読んでいたら、
ケンドーコバヤシさんが
バイアグラは心臓によくないみたいな話を聞いている」
といった内容の発言をしていた。
実際の臨床現場でも、これらの薬を処方する際は、
患者から「体に悪いんですよね?」といった質問をされることが少なくない。
多くの患者が、「バイアグラは体に悪い」といった都市伝説を信じ込んでいるのである。

ここで私が声を大にして言いたいのは
バイアグラをはじめとするPDE5阻害薬は体に良い!」ということだ。

ED患者に処方されるPDE5阻害薬は
血管内皮機能を高めるとともに
血管内皮前駆細胞数を増加させることが証明されており、
血管内皮の再生を高めることも知られている。
それならば
「ED治療薬であるPDE5阻害薬自体が、心臓に良いのでは?」
という仮説を証明し検証したのが今回の論文である。

Effect of phosphodiesterase type 5 inhibitors
on major adverse cardiovascular events
and overall mortality in a large nationwide cohort of men
with erectile dysfunction and cardiovascular risk factors:
A retrospective, observational study based on healthcare claims
and national death index data. J Sex Med 2023; 20: 38-48

PDE5阻害薬とは? EDと心血管イベントの関係

そもそもPDE5とは何かというと、
「平滑筋の弛緩などに関わる環状グアノシンーリン酸(cGMP)を分解する酵素
のことを指している。
PDE5阻害薬は、PDE5の作用を妨げることにより
血管平滑筋を弛緩させるcGMP濃度を上昇させ
血管拡張作用による陰茎海綿体内の血流量および酸素供給の増加を介して
EDを改善させる作用がある。

血管性EDの主な原因は
血管内皮機能不全(endothelial dysfunction)であることが指摘されている
(Hidalgo-Tamola J, et al. J Sex Med 2009; 6: 916-926)。

Endothelial dysfunction=Erectile dysfunctionといわれるほど
血管内皮機能と勃起能は密接に関係している。
これら血管性EDは、心血管病変と同様のメカニズムで発生しうることから
生活習慣との相関関係が指摘されており
EDは生活習慣病の1つという位置付けになっている。

事実、喫煙・高血圧・肥満・運動不足・冠動脈疾患は
EDのリスクファクターであると同時に
EDがこれら生活習慣病発見のための
サロゲートマーカーとなりうることが注目を集めている。

例えば、明らかな冠動脈疾患がないED患者に負荷心電図検査を施行すると、
8~56%で異常所見が認められる
(日本性機能学会, ED 診療ガイドライン作成委員会. 『ED診療 ガイドライン』第3版. 2017)
動脈硬化性疾患患者では
陰茎海綿体やそれを栄養する内陰部動脈の血管内皮機能障害を来すと
血管内皮由来一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性低下が起こり
NO産生が低下することから血管の弛緩不全や動脈硬化が進展。
陰茎血流量が低下し、血管性EDが惹起されるのだ。

研究のポイント:大規模コホート研究において、PDE5阻害薬使用の有無別に心血管発生イベント・死亡率リスクを検討

対象は、米国の5,000万人を超える民間の医療保険加入者の
医療情報データベースを用いたPDE5阻害薬使用の男性ED患者(2万3,816例)
と非使用ED患者(4万8,682例)の後ろ向き観察コホート研究。
主要評価項目は、心血管イベント
〔MACE:心血管死、心筋梗塞、冠動脈再灌流
(経皮的冠動脈インターベンションまたは冠動脈バイパス移植)
脳卒中心不全、不安定狭心症による入院の複合〕とした。

結果①:PDE5阻害薬の使用により、MACE発生と全死亡が低下する

PDE5阻害薬使用群と非使用群で比較すると、
使用群ではMACE発生率が有意に13%低かった
〔ハザード比(HR)0.87、95%CI 0.79~0.95、P=0.001〕。
なんと、全死亡率は有意に25%低かった(同0.75、0.65~0.87、P<0.001)。

結果②:PDE5阻害薬の使用は明らかな心血管病がないED男性のMACEおよび死亡リスクを低下させる

次に、明らかな心血管疾患がないED患者で評価した。
その結果、非使用群に対し使用群では、
MACE発生率 (HR 0.88、95%CI 0.80~0.97、P=0.009)、
全死亡(同0.76、0.65~0.89、P<0.001)のいずれも有意に低く、
心血管死(同0.66、0.43~1.02、P=0.059)については
有意差がなかったものの、低下傾向が見られた。

結果 ③:PDE5阻害薬と心血管疾患に用量反応効果

PDE5阻害薬の用量別〔最低四分位群(5.5錠)~最高四分位群(191.2錠)〕に見ると、
明らかな用量反応効果が示された。
MACE発生率は、最低四分位群に対し最高四分位群で有意に55%低かった
(HR 0.45、95%CI 0.37~0.54、P< 0.001)。

結果④:PDE5阻害薬は、糖尿病または明らかな心血管疾患の既往歴を有するED男性のMACEを減少させる

さらに2型糖尿病を有するED患者では、
PDE5阻害薬使用とMACE発生率低下との有意な関連が認められた
(HR 0.79、95%CI 0.64~0.97、P=0.022)。

私の考察:これからは胸を張って、「バイアグラは心臓に良い!」と患者に言える

そもそもバイアグラは、
狭心症治療薬の開発中にできた副産物であるという歴史的経緯からして、
心臓に良いことはさほど疑問にも思わないし、
今回のように有効性が証明されてよかったと考えている。
しかし用量が多いほどMACE発生リスクが低下したのには驚いた。

これからは、
バイアグラは体に良い薬だよ!」と胸を張って啓発することができる。
そもそもバイアグラは、英国など幾つかの国では
一般用医薬品OTC)として販売されており、
適切に使用すれば安全で有効な薬であることに議論の余地はないであろう。
個人的には、もっと使われるべき薬だと思っているので、
今後もより多くの患者に対し適切に使われることを願っている。