漢方が救う高齢者治療

漢方が救う高齢者治療
認知症・循環器疾患・歯科…安価で副作用少なく
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO35684380T20C18A9TCC000/



▼循環器疾患
5年前、心筋梗塞で神戸海星病院に救急搬送された山田光太郎さん(仮名、70)は
治療で回復、10日余りで退院したが、胸が詰まるような感覚を訴えて再び来院。
内科の北村順部長が問診や腹診などをし、
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を処方したところ、2週間ほどで症状が消えた。


北村部長によると、高齢者に多い慢性心不全は足のむくみを生じやすい。
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を使えば、
腎機能悪化や血圧低下のリスクがある利尿剤を減量できる。
「ただし麻黄や甘草を含む製剤は心不全を悪化させたり
血圧を上げたりするので注意が必要」という。


認知症
記憶障害や実行機能障害などの中核症状のほか、
暴言や興奮、不眠、うつ、徘徊(はいかい)、
妄想といった行動・心理症状(BPSD)が現れ、介護者の負担を高めている。
BPSDを改善する薬として、
抑肝散(よくかんさん)が2000年代から広く使われるようになった。
筑波大学大学院人間総合科学研究科の水上勝義教授によると、
アルツハイマー認知症のBPSDに対してはほかに
抑肝散加陳皮半夏(かちんぴはんげ)や
釣藤散(ちょうとうさん)、
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)なども有効という。


▼歯科・口腔内疾患
12年の歯科の診療報酬改定で初めて漢方薬の項目が設けられて以降、
抜歯後の痛みなどに立効散(りっこうさん)、
口内炎半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、
口腔乾燥症に五苓散(ごれいさん)や
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)など11種類が入った。


王宝禮・大阪歯科大学教授らが09年に
全国の歯科・口腔外科計111施設を対象に行った調査では、
舌痛症や味覚障害顎関節症など幅広い疾患に対して、
麦門冬湯(ばくもんどうとう)、
加味逍遥散(かみしょうようさん)、
半夏厚朴湯、
排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)
なども使われている実態が判明した。


▼老年症候群
加齢に伴い運動機能や活力が低下する「フレイル」や
筋肉量が減少する「サルコペニア」への漢方の利用を模索する動きもある。
大阪大学大学院医学系研究科の萩原圭祐・特任教授は
牛車腎気丸の筋肉量を増やす効果をマウスを使った実験で確かめたうえ、
患者に投与したところ、歩幅の大きさを計測するテスト結果が約1割改善。
試験前後の変化率も投与グループが投与していないグループを大きく上回ったという。