感染症伝播の予防には握手より“フィストバンプ”を

英医師ら「感染症伝播の予防には握手より“フィストバンプ”を」
3つの方法を実験で比較
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1407/1407086.html



 先日,米の医師らが手指衛生対策の一環として医療機関での握手を別の方法に変えようと提言した(関連記事)。これを受け,英国から新たな実験結果が報告された(Am J Infect Control 2014; 42: 916-917)。Aberystwyth UniversityのSara Mela氏らは,握手の他,手のひらを互いに合わせる“ハイファイブ”,そして拳を突き合わせる“フィストバンプ”の3つの方法による相手の手への細菌移行の違いを検討。握手よりもフィストバンプを行うことで,個人間の感染症の伝播を減らせる可能性があると提言している。


オバマ大統領やダライ・ラマ法王もフィストバンプ

 コンピューターのキーボードやドアノブなどを介して感染症の病原体が間接的に伝播するリスクがあることが報告されている他,握手などの直接的な接触ではより伝播のリスクが高まることが知られているとMela氏ら。

 同氏らは,西洋では長年根付いてきた握手の他に若い人の間ではハイファイブやフィストバンプが日常的になりつつあると代替方法を紹介。米国のバラク・オバマ大統領やチベットダライ・ラマ法王が公式の場でフィストバンプを行っていると述べ,今や若い人だけの挨拶方法ではないとの見方を示している。今回,同氏らは握手の他,ハイファイブ,フィストバンプの異なる挨拶の方法で微生物伝播に違いがあるのかを検討した。

細菌移行量は握手>ハイファイブ>フィストバンプ

 ドナーが滅菌手袋を付けた手を,非病原性大腸菌の培養液(2.4×109CFU/ mL)に浸し,乾燥。別の滅菌手袋を付けたレシピエントと握手,ハイファイブ,フィストバンプを行った後にレシピエントの手袋を緩衝液に浸し,液中の細菌数を計測して細菌移行の程度を評価した。

 握手ではハイファイブに比べ約2倍多い細菌の移行(平均1.24×108CFU)を確認。同時にアクリル塗料による接触面積の評価を行ったところ,最も接触面積の多い握手での移行量が最も多く,次いでハイファイブ,最も接触面積の少ないフィストバンプでは最も移行量が少なかった。

 また,フィストバンプハイファイブの時間,通常の握手と同程度の時間(3秒)に延長した場合,フィストバンプでは非延長時に比べ細菌移行量が有意に増加(P<0.05)したのに対し,ハイファイブでは非延長時に比べ移行量の有意な増加は見られなかった。

 さらに,握手の際の握力別の評価では強い力での握手により,中程度の力の場合に比べ細菌移行量の有意な増加が確認された(P<0.01)。

 Mela氏らはほぼ全ての関連因子を除外したモデルを用いた実験で,フィストバンプハイファイブによる挨拶が握手に比べ細菌伝播を減らすことが示されたと結論。握手による細菌伝播の程度は,接触面積の広さだけでなく,握手の時間の長さや握る力の強さによっても違いがあったと述べた。また,今回の検討では非病原性大腸菌を使用したが,ウイルスを含む病原性微生物でも結果は同様だろうとの見解を示した。欧米で全く接触を伴わない挨拶が握手の代替となるとは考えにくいが,公衆衛生向上の観点からは手指衛生に配慮した挨拶の方法として,フィストバンプが広まっていくことが望ましいと結んでいる。