バフェット流で探す割安株 ＮＩＳＡ元年の投資術
http://www.nikkei.com/money/investment/mandi.aspx?g=DGXZZO6501934008012014000000&df=1
ウォーレン・バフェット氏の運用手法を探り、銘柄スクリーニングを実践してみよう。
バフェット氏が率いる投資会社、
バークシャー・ハザウェイの１株純資産はこの半世紀近くで数千倍に膨らんだ。
さぞ多くの銘柄に分散しているのかと思いきや、
保有株リストにはＩＢＭやウォルマート・ストアーズなどわずかしかない。
「私が求めるのは安定した産業のなかで長期にわたり競争優位性を保持している企業」。
かつてバフェット氏は望ましい投資先についてこう言及した。
潜在的な企業価値に比べて株価が割安な
バリュー株を見抜くことがバフェット流の運用スタイルだ。
バフェット氏の保有株をもとにどのような基準で投資先を決めているのか、
大まかな傾向を推測してみた。
収益力を示す自己資本利益率（ＲＯＥ）は20％前後とかなり高い。
有利子負債から手元資金を差し引いた純有利子負債が自己資本の何倍かを表し、
低いほど財務基盤が強固とされるネットＤＥレシオ（純負債資本倍率）は
0.5倍前後などの目安がうかがえた。
高いＲＯＥでキャッシュを安定的に稼ぎ、
配当や自社株買いなどを実施してもなお揺るぎない財務の健全性――
などの企業像が浮かび上がる。
日本株に当てはめるとどうなるだろうか。
金融などを除く上場企業を対象に
(1)予想ＲＯＥは10％以上
(2)ネットＤＥレシオは１倍未満
(3)ＰＢＲは東証１部企業の平均に近い1.5倍以下
(4)過去５期に営業赤字がない――
など日本企業の実態も勘案してふるいにかけた。
該当したのは127銘柄だ。
例えば、住友ゴム工業や横浜ゴムなどのタイヤメーカー。
新興国などの自動車保有台数の増加に伴い、
利益率の高い交換用タイヤの継続的な需要が見込める。
最大手のブリヂストンに比べて
「相対的に市場での注目度が低い面もあり、割安といえそう」
（大和住銀投信投資顧問の窪田真之氏）。
◆ニッチ業種に候補
業界トップよりも２番手以下やニッチな業種、
地方企業にバリュー株候補が埋もれていそうだ。
ニッパツや日信工業、エフ・シー・シーなどの自動車部品株は、
完成車メーカーの陰で地味な存在だが、
技術力も高く、知る人ぞ知る割安株の宝庫とされる。
液晶用フィルムに強い日本合成化学工業や
東南アジアで包装資材向けインキに注力するサカタインクスもある。
小売業ではスーパーのバロー。
高級ブランド品などを中古販売するコメ兵は
老舗の安心感を背景に太い仕入れ、販売ルートを築いている。
インフラ関連では東京ガス。
首都圏で1000万件超にのぼる厚い顧客層を有する。
日本車両製造は東海旅客鉄道（ＪＲ東海）の連結子会社で
新幹線や鉄道各社の車両を手掛ける。
台湾やシンガポール、フィリピンなどに輸出しており、
米国工場強化など外需開拓に積極的だ。
◆ブームに乗らない
ＳＭＢＣ日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは
「（医薬品メーカーなら主力薬の特許切れなど）
今後の業績に悪影響を与える要因が潜んでいないかなど
数字以外の情報にも目配りしたい」と助言する。
バフェット氏も丹念に情報を収集し、
自分が理解できる業界や銘柄にしか投資しない主義だ。
だから、銘柄の顔ぶれも毎年あまり変わらない
ブームに乗じて値上がり益を追わないから
ＩＴバブル期など運用成績が一時的に見劣りした時期もあるが、下げ局面で強い。
大和住銀の窪田氏は
「バリュー株投資は中長期で成功する可能性が高く、個人投資家向き」と話す。
ＮＩＳＡは年間100万円までの株式投資などで得た配当や譲渡益が最長５年間非課税。
バリュー株に向く制度ともいえる。
立花証券の平野憲一顧問は
「企業の成長とともに株主も果実を得るのが投資の醍醐味。
少なくともＮＩＳＡの５年間は付き合うくらいの覚悟で投資するとよい」と話す。
短期の騰落に一喜一憂せず、長期保有に力点を置くバフェット流投資を試す好機ではある。
◆「お得感」の有無に着目
株式運用の場合、大まかにグロース株投資とバリュー株投資に分かれる。
グロース株は、ネット企業のように
産業構造の変化などを背景に利益成長を続ける銘柄群を指す。
景気循環との相関性が比較的小さく、株価が多少上がっても「割高」と判断しにくい。
順張り、上値を追うような投資が向くとされる。
バリュー株は文字通り企業の価値に着目し「お得感」のある銘柄をいう。
100の価値があるのに株価が80なら、いずれ株価が修正（上昇）すると考える。
出遅れという単純な切り口ではなく、自社の企業価値を何年で稼げるか、
ブランド力はどうかなどものさしは様々だ。
