喫煙の居酒屋は北京並み

「たばこ」PM2.5の塊 喫煙の居酒屋は北京並み
脳卒中やがんリスク
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO52617740Z00C13A3MZ4000/?dg=1





PM2.5への関心が高まっている。
身近なところに濃度が極めて高い場所がある。
喫煙可能な室内だ。例えば、禁煙していない居酒屋だと
北京市の最悪時の濃度と変わらない。専門家は屋内の全面禁煙を訴えている。


「PM2.5はたばこの煙も危険だ」。
医師らでつくる日本禁煙学会は2月、こんな見解を発表した。
直径が2.5μm以下の微粒子は化石燃料や草木などが燃えたときに発生する。
たばこの煙もそのひとつで、フィルターを介せずに周囲に広がる副流煙に多い。
中国から飛来するPM2.5よりも「受動喫煙の影響の方が大きい」と主張する。


◆ショッキングな数字
様々な研究者が実際に測定したデータをまとめた学会の資料には
ショッキングな数字が並ぶ。
自由に喫煙できる居酒屋のPM2.5の濃度は空気1立方メートルあたり568μg。
中国政府が「最悪」と評したときの北京市の大気とほぼ同じ水準だ。
禁煙席でも、喫煙席とガラスや壁で完全に仕切られていない場合は同336μgに達した。


日本癌学会など18の学会でつくる禁煙推進学術ネットワークが
2月下旬に公表した調査も、同じような結果だった。
福岡市にある喫煙可能な喫茶店では同300μgを超えた。
禁煙学会理事長の作田学医師は
「禁煙学会に所属する医師たちは2006年ごろからたばこのPM2.5問題を訴えてきた」と話す。


国の環境基準値は1日平均で同35μg
環境省の検討会がまとめた外出自粛などを呼びかける暫定指針は同70μgだ。
禁煙学会などのデータは環境省自治体が発表する速報値に相当する。
1日分の測定値から1時間分の平均を示す環境基準値とは単純には比較できない。
ただ、大気汚染の速報値で同100μgを超すことはほとんどない。


「客なら滞在していても1〜2時間なので影響は少なくて済む」。
こう考える人もいるだろう。
しかし、様々な研究から、多くの専門家が短時間でも悪影響はあると結論づけている。
1日中いる従業員の場合はなおさらだ。
産業医科大学の大和浩教授は
「屋外の汚染を怖がるのなら、喫煙可能な喫茶店や飲食店を怖がってほしい」と話す。


たばこを吸う家族がいると、住宅内のPM2.5濃度は大きく上昇する。
大阪市立環境科学研究所の調査によると
誰もたばこを吸わない家庭は同20μg程度だったのに対し
喫煙者のいる家庭では同50μg前後に達した。


PM2.5濃度と健康への影響

緊急事態  (251〜) 一般の人々の呼吸器に重い症状が現れる恐れがある
大いに危険  (151〜250) 一般の人々の呼吸器に疾患が明らかに増える
危険  (66〜150) 一般の人々の呼吸器に症状が現れる
弱者に危険  (41〜65) 感受性の高い人の呼吸器に症状が現れる
許容範囲内  (16〜40) 特別に感受性の高い人の呼吸器に症状が現れる
良好  (0〜15) 空気の質は良好で、健康の危険はほとんどない

環境保護局の資料。


◆空気清浄機も限界
問題は大気中に漂うPM2.5よりもたばこの煙の方が有害性が高いことだ。
煙の中には70種類近い発がん性物質が含まれている。
「様々な調査から、受動喫煙による死亡リスクはPM2.5の値よりもはるかに高い。
怖がるのなら、明らかにたばこの方だ」と大和教授は強調する。


完全分煙にするか、室内を全面禁煙にしないと、効果は薄い。
国立がん研究センターの推定では、受動喫煙で死亡する人は年間6800人に達する。
英国やイタリアなど受動喫煙防止法を導入した国では
心筋梗塞などのリスクが減ったとの報告がある。


PM2.5 PM2.5 大気汚染