ACE阻害薬とARBの違いと特徴

笹嶋勝「クスリの鉄則」



ACE阻害薬とARBの違いと特徴
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/tessoku/201201/523408.html

  • 薬物動態

ACE阻害薬は腎排泄のものが多く、ARBは肝代謝や胆汁排泄の薬剤が主です。

  • 腎機能疾患について

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009』(日本腎臓学会)では
CKD患者に対する降圧治療においては、「ACE阻害薬またはARBを第1選択とする」とされ
「いかなるステージの糖尿病性腎症でも、その進行を抑制する」と記載されています。
このガイドラインでは、両者の優劣については触れていません。

  • ACE阻害薬とARBの併用について

ACE阻害薬をARBに併用すると
ARBによる血中アンジオテンシンⅡの増加がACE阻害薬で抑制されるため
より効果が高まるのではないかと考えられ、併用されることがあります。
しかし、『高血圧治療ガイドライン2009』(日本高血圧学会)では
ONTARGET試験で、この併用の効果については否定的だったことが紹介されています。
一方で『CKD診療ガイドライン2009』では
「ACE阻害薬とARBの併用は蛋白尿の減少に有効である」とした上で
ONTARGET試験においては、併用により
腎機能障害の進行などの副作用が有意に増加していることに注意を促しています。

  • ACE阻害薬の空咳について

「ACE阻害薬の空咳」には、以下のような特徴があります。
・ 飲み始め初期から数カ月以内に発症する
・ 2〜3カ月で消失する(我慢できれば、咳を理由とした処方変更の必要はない)
・ 女性に多い
・ 夕方から夜間に起きることが多い

  • 重大な副作用としての「血管性浮腫」

ACE阻害薬やARBの副作用のうち
ぜひ知っておいていただきたいのは「血管性浮腫」です。
服用初期から起こり、最悪の場合、致命的にもなる副作用です。
患者が、服用開始初期に、しゃべりづらさや口の腫れなどを訴えたら
すぐに病院受診を勧めましょう。
医薬品医療機器総合機構重篤副作用疾患別対応マニュアル
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0803004.pdf

  • 適応外処方

認知機能への影響
脳移行性のあるACE阻害薬やディオバンでは、アルツハイマー病の新規発症を抑制し
認知機能の低下を抑制する効果があると言われています。