5月
タンセンからヴァラナシへ一気に南下する
ブッダエアでポカラに到着。右は福島
ネパールの避暑地ポカラで
ヒマラヤの朝焼けを見て感動した後
白人のバックパッカーで満員のバスで山道を7時間南下
タンセンという村で降りた。
バスを降りたのは僕たち3人だけで
他の白人たちは一気にインドまで行くようだ。
タンセンで1泊して夜空を堪能し
翌朝8時のローカルバスから更にバスを乗り継いで3時間後
国境の町スノウリに到着した。
歩いて国境を越える。
スノウリボーダーを越える
標高が低くなるにつれ、だんだん暑くなってきた。
スノウリから乗合タクシーで3時間かけてゴラクプルという町に着いた。
すでに6時間も移動に費やしていたので、僕はこの町で一泊しようと主張したが
早くヴァラナシへ行きたいと言う辰巳、福島に多数決で負けた。
駅に行ってヴァラナシ行きの列車の切符を申し込んだが今日はもう終わりという。
じゃあタクシーで行くかということになり
タクシー乗り場に行くとタクシーの運転手たちに囲まれた。
最も安い値段でいいと言ったのはまったく英語ができない運転手で
野次馬が通訳してくれて、1300ルピー(4550円)で交渉成立。
その運転手はまず、自宅に帰って僕たちを何分か待たせた。
家の人に今日は遅くなると言いに行ったのだろうと僕たちは思っていたが
なぜか彼は、若い男女を連れてきて助手席に2人を座らせた。
言葉が通じないのでどういう関係なのかわからないが、
どうやら彼らは新婚の夫婦で聖地ヴァラナシに沐浴に行くようだ。
(推測です)
先に前金でガソリン代を600ルピーくれと言うので支払った。
車は風通しの良いジープで
猛スピードでぶっ飛ばすが炎天のため風は熱風だ。
左右とも広大な田園でずっと同じ風景の中
右手に夕日が沈むのを見ながら走っていた。
道は舗装されているが見かけより悪く車はかなり上下に揺れた。
ずっと手摺につかまっていなくてはならず、眠ることはできない。
途中1回だけ2ルピーのチャイで休憩をとり、
6時間かけてホテルに着いたときには23時になっていた。
休憩所にて、左は辰巳と運転手
運転手に残りの700ルピーを支払うと、
疲れて険しい顔をしていた彼は人懐っこい笑顔で握手を求めてきた。
更に1ドルのチップをあげたが彼は1ドル札を見たことがないらしく
他の人に聞いてその価値を知り喜び、更なる握手をして別れた。
彼はまた6時間かけてゴラクプルへ戻るのだ。
つまり僕たちは彼を往復12時間拘束したことになる。
ガソリン代もかかる。
僕らが支払った1300ルピーのうちどれくらいが利益なのだろうか。
※インドにおいて1日の収入が
1ドル以下の人たちが全人口の44%
2ドル以下は66%との報告がある。
(2000.12 読売新聞)
高級ホテル「クラークス」へチェックイン。
へとへとになっていた。
ここで満室だと言われたら気を失って倒れたかも知れない。
朝8時から23時まで移動し続けたのだ。(15時間です)
どろどろになった体に熱いシャワーを浴びせたあと
ルームサービスで食べ物を大量に頼んで
冷えたビールで乾杯。
ヴァラナシ
翌朝、ヴァラナシ駅でガヤ行きの切符を買うため
ツーリストオフィスに行くと
バックパッカーで長蛇の列になっていた。
ジャンケンで負けた辰巳を並ばせて
僕と福島は安宿を探しに行った。
宿は河の近くにある「ガンジス」に決定。
エアコンのある部屋を2つとってバックパックを放り込む。
駅にもどって辰巳と合流。
ガヤ行きはとれず、明日は朝5時発のカルカッタ行き
(2等車・エアコンなし)しか取れないという。
帰りの飛行機が固定されているため
それを選択するのが賢明だと思われた。
ガートで「神サマ買ウカ?」と少年が声をかけてきた。
少年はインドの神々のちゃちな人形を売っている。
その独特な言い回しには記憶があった。
ドラマ「深夜特急」で大澤たかおと仲良くなるという設定の少年だ。
福島が人形を買ってあげた。
話を聞くと少年はその出演料8000ルピーを親に渡し
両親が布屋を開店する頭金にしたそうだ。
ガートで神戸から来たという一人旅のOLと合流。
Tシャツがはちきれそうな巨乳ちゃんだ。
ガートの近くでビールを飲みながら夕飯にしようか
ということになったが
何軒回ってもビールを置いてない。
やっと見つけた店では
ビールをステンレスの容器に移し替えて出してきた。
グラスもステンレスだ。
ウエイターが小声で他の客に気づかれないように飲んでくれと言う。
なるほどここは聖地なのだ。失礼しました。
途中ではぐれて、夜、ホテルで再会した辰巳は
急に気が変わって、夜明けのガンジス河を
巨乳ちゃんといっしょにボートに乗ると言いだした。
列車はどうすんの、と聞くと
何とかなるでしょう、と言う。
それじゃあ、カルカッタのどこかで会おうと
辰巳をひとり部屋にして別れたため
福島とダブルベッドで寝る羽目になる。
朝5時にヴァラナシ駅に行くために
ホテルガンジスを出てすぐにリキシャが拾えない場合を考えて
4時に起きることにした。
夜になっても暑い。40℃近くあるのではないか。
河が近いから湿気が強い。
ホテルガンジスのエアコンはフル回転しているが
まったく冷えないし湿気も取らない。
機械が古すぎる。
天井の大きな扇風機も最大速度で回転しているが
蒸し暑い空気をかき回しているだけで
サウナ風呂にいるようだ。
ほとんど眠れぬまま朝4時をむかえた。
ヴァラナシからカルカッタへ列車で移動する
薄暗い中、ホテルを出るとすでに
オートリキシャもサイクルリキシャもそこにいた。
というよりそこで寝ていたようだ。
駅までの道は嘘のように空いていて快適だった。
交通の邪魔をする牛も寝ている。
ヴァラナシ駅で熱いチャイを飲む。
すでに駅にはたくさんの人々が列車を待っている。
定刻よりも前に列車が到着した。
夥しい数の人々が猛烈な勢いで
我先に列車に乗り込もうとする。
降りる人などおかまいなしだ。
10分くらいオシクラマンジュウをして
5時過ぎに動き出した列車に
やっと乗りこむことができた。
切符は2等だが指定席なのでその席を探す。
通路がいっぱいでなかなか動けない。
じりじり進んでやっとその席を探し当てたが
すでに満席になっている。
切符を見せて代わってくれといっても無視だ。
別の人に聞くと、あそこの人が座っている席がそうだから
そこに座れと言うがその人に注意してくれるわけではない。
カルカッタまでは12時間と聞いている。
この暑さの中、立ったまま行くのは辛い。
再度座らせろと主張。
結局3人席に5人で座る。
荷物棚に座っている人の横に
無理やりバックパックをねじ込んでチェーン錠をかける。
座れて良かった。
しかし席を確保できるまでに1時間以上はかかった。
チャイ屋、コーラ売り、サンドイッチ売り
バナナ売り、弁当屋(カレー)などの物売り
が入れ替わり立ち代り現れる。
駅に止まると窓からも売りに来る。
周りの人たちは頻繁に買い食いをして
バナナの皮やチャイのコップを通路に投げ捨てる。
それを粗末なホウキで掃除する子供がいて
(と言っても隅っこに寄せるだけだが)
感心して見ていると金をくれと言う。
結局は乞食なのだが
僕はごみを捨てていないので金を払う筋合いはない。
駅に着くたびに乞食が乗って来て物乞いをして回る。
老婆もいれば、這いずって来る乞食もいる。
その頃になってやっと僕たちは乗客の大半が無賃乗車なのだ
ということがわかってきた。
僕たちの横に座っている奴らには切符はないはずだ。
なにしろ辰巳の分の切符もあり
その3人席は僕たちの席なのだから。
椅子は木で尻が痛い。
エアコンなしの2等車で3人席に5人座っている。
肌が触れ合っているためかなり暑い。
3人席が向かいあって定員6人のところに9人座っている。
更に上の荷物棚に5人いて、その一角に合計14人いる。
6人定員のサウナ風呂で14人が
肌を寄せ合っているような状態だ。
昼が近づくに連れ気温が上昇している。
持ってきたペットボトルの水は
ぬるま湯になってしまい飲む気がしない。
売り子が来るたびに冷たいペプシやリムカをがぶ飲みする。
しかし小便は催さない。大量に汗が出ているせいだ。
まったく食欲がおこらない。
前に座っていたオッチャンは弁当を買って
カレーとライスを器用に右指で混ぜ合わせて食べた。
無賃乗車と思われる輩は売り子から何も買わない。
カルカッタに着いたら、ホテルで熱いシャワーを浴びて
エアコンの効いた部屋で眠りたい。
暑い列車の中でガマ蛙のように汗をダラダラ流しながら
ずっとそう考えていた。
8時間経過した頃、
どこかの駅で1人降りて3人席の5人が4人になった。
暑さがぜんぜん違う。
かなり楽になった。
向かいの席も4人から3人になったが
上の荷物棚から1人降りてきて、また4人になった。
降りてきた青年はカルカッタで開業している耳鼻科の医者だ
と言って名刺をくれた。
そう言われると賢そうな顔に見えてきた。
他の人たちはサンダルを履いているのに彼は革靴を履いている。
彼もエアコンつきの車両が満員だったので2等車に乗ったと言う。
会話をする時、彼らの相槌は首を横にかしげる。
僕たちは縦に振る。なんか変な感じだ。
周りの人たちが僕たちが首を縦に振るのを見て面白がってやりだした。
しかし、インド人が首を縦に振ると奇妙に感じる。
予定通り12時間でカルカッタのハウラー駅に到着した。
周りにいた人たちと握手して別れた。
彼らはみな親しく会話していたので仲間かと思っていたが全員他人だった。
タクシー乗り場で青年医師がサダルまでの値段を安く交渉してくれて、
そこで彼と握手して別れた。
サダル
リットンホテルでシャワーを浴びて一服した後
ピーターキャットでうまいカレーを食べた。
サダルを歩いていると、暗がりの歩道で大便している男がいた。
サダルには牛がいないので糞には注意していなかったが、人糞には要注意だ。
翌朝5時に目が覚めたので
サダルに面したホテルのベランダから通りを眺めていた。
カラスがたくさん飛び交っている。
首がグレーで日本のカラスとは少し違うが不気味な鳴き声は同じだ。
道を掃除している人がいて、スコップで路上のゴミをリヤカーに積んでいる。
2台のリヤカーが山盛りになって通りがきれいになった。
道に手動ポンプの井戸があり
路上生活者が水を汲みに来たり体を洗う。
少年がヤギの群れを引き連れて
マイダーンという広大な公園へ放牧させに行く。
カルカッタ名物の人力車が
チリンチリンと鈴を鳴らして走っている。
ヴァラナシで会った巨乳ちゃんによると
カルカッタに寄ったが、人力車は見なかったと言っていた。
いよいよ廃止になったのかと残念に思っていたが
人力車はまだ健在だった。
久しぶりにすがすがしい朝だった。
またいつかこの街に来たいと思っていた。
《消え行く人力車》
1997年 コルカタでは人力車の
新規のライセンス交付をやめたそうです。