骨音

水の中で爆発を聞くような
くぐもっているくせに異常に鮮明でカン高い音。
何の前触れもなく、でたらめなスピードで立ちあがり
聴覚神経を根こそぎ揺さぶって全身を別世界にもっていってしまう音だ。

その音はちょっと不気味だが
それまでに聞いたことのない断然カッコいい音だった。

誰がどんなふうに作ったのか
その場にいたガキはひとりとして気にしなかっただろう。
だって、あれだけ速けりゃそれで十分じゃん。

だが、そんな異常な速さなど何かを犠牲にしなければ
この世界では決して得られるはずがないものなのだ・・・

池袋ウエストゲートパーク  石田衣良
(プロローグ 一部改変)
おれのPHSの裏側にはプリクラが一枚貼ってある。
おれのチームのメンバー五人が狭いフレームになだれこんで
写っている色のあせたシール。
プリクラの中には、ほっぺたとほっぺたをくっつけて
最高に面白い冗談を今聞いたばかりって顔が並んでいる。
なにがそんなに面白かったのか、おれは覚えていない。
そんなシールをいつまで貼っているんだっていう奴もいる。
そのたびに「夏の思い出」とか「過去の栄光」とか適当に答える。
だけど、本当はなぜなのか、おれにもよくわからないんだ・・