プーチンの国家観

「頭の中が100年単位で古い」プーチンの“あまりに特殊な国家観”
https://bunshun.jp/articles/-/52317
プーチンは城に閉じ込められているようなものなんですよ」
https://bunshun.jp/articles/-/52318

軍事評論家、東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏
――ロシアという国は、いまの世界、そして国際政治の現場をどのように捉えているのでしょうか。
ソ連が崩壊して、スーパーパワーでなくなってしまったということが、
ロシアにとってはわれわれが想像する以上に面白くないことでもあったし、
もっと言うと脅威でもあったと思います。
ロシアの世界観は、パワーに大きく依存しています。
世の中や国際政治を動かすパワーと一口に言っても様々ですが、
ロシアは剥き出しの「軍事力」を極端に強調するんです。


――どうしてクリミアを侵略したのでしょうか。
ロシアからしてみれば侵略じゃないんですよね。
あくまで「防衛的行動」を取っただけだと思っている。


――旧ソ連諸国には、いまだ「保護者」として振る舞うわけですね。
ロシアの世界観では、
まだ危なっかしい独り立ちできない旧ソ連の子たちを
アメリカがたぶらかそうとしていると思っている。
ウクライナオレンジ革命
グルジアバラ革命
キルギスチューリップ革命……。
2000年代に一連の民主化革命が旧ソ連の国々で起こりました。
ロシアの見方は「これはアメリカの陰謀」と理解するわけです。
全部アメリカが裏から糸を引いていると。
ロシアからすれば、「保護下にあるまだ無力で未熟な国々を、
アメリカは裏から操って、そこでこういう政権崩壊を引き起こした。
われわれが素早く入っていって守らなければ」という認識で介入したわけです。
クリミアって大きいんですよ。九州の7割ぐらいの面積があるので。
そこに200万人以上が住んでいるというものすごく大きなところを、
軍隊で占領して、併合してしまうって、19世紀みたいですよね。
実際、ドイツのメルケル首相は
「19世紀とか20世紀前半みたいな振る舞いだ」という言い方をして批難しました。
プーチンは「頭の中が100年単位で古い。数世紀遅れている」


――歴史の教科書で見るような事件に思えました。
まさに時代錯誤なんですよ。要するに、「古臭い」んですよね。
プーチンが18世紀のロシア帝国の皇帝だったら名君です。
でも、それを21世紀にやってしまったことが大問題なんです。


――プーチン体制はいつまで続くのでしょうか。
現状、ミニプーチンならいっぱい居るんですよ。
プーチンが辞めた後、プーチン的な統治を続けることはできると思うんです。
問題は、そのプーチン的統治を続けても、国としてジリ貧だということです。
ベストのシナリオは、2024年にちゃんと任期通りにプーチンが辞めることですが、
ここで辞めるとプーチンは逮捕されたり、身に危険が及ぶ可能性が高い。


――城から生きてでることはできないと?
城から出た瞬間に、権力がなくなった瞬間に破滅する。
ロシアの中にも、プーチンが権力を失った瞬間に
のし上がってやろうと思っている連中はいっぱい居る。
そうすると、プーチンとしては怖くて辞められない。
だから、身の安全を維持できるぐらいの権力を保ちながら
半引退するみたいなことができればいいけど、
それが難しい場合、本当に「終身独裁」を続けることになるかもしれない。