ユーロはどこで間違ったのか

ユーロはどこで間違ったのか ギリシャから読み解くhttp://www.nikkei.com/money/features/29.aspx?g=DGXNASFZ1302M_14062012K11000



6月17日のギリシャ再選挙を、後世の歴史は何と記すだろう。
「ユーロ瓦解の始まりのXデー」か、それとも「統合深化の記念日」か……。
ユーロの歴史を理解すれば、今日の危機の実相が見えてくる。


経済規模も人口もEU全体の2〜3%にすぎない小国が
もう2年半も世界を振り回し続けている。
再選挙の節目を機にユーロの歴史を振り返れば
債務危機の火元は他国からの庇護に慣れきったギリシャの国民性と
そんなギリシャを共同体に迎えざるを得なかった欧州の
「時代の要請」という2点に行き着く。


ギリシャは19世紀前半の独立戦争
400年に及ぶオスマン帝国の支配を打ち破った。
その際、英国の詩人バイロン卿やフランスの画家ドラクロワ
多くのインテリが立ち上がり、ギリシャ支援の国際世論を盛り上げた。
独立後には欧州諸国から巨額の借款も得ている。手厚い支援の背景には
欧州の源流、古代ギリシャ文明に対する人々の憧憬があったのだろう。
ギリシャが、国ごとに異なるユーロ硬貨の絵柄に選んだのは
「ヨーロッパ」の語源となったギリシャ神話の女神エウロペだ。


一方、1967年から74年までの軍事独裁政権で経済的に後れをとったギリシャ
81年という比較的早いタイミングで
EUの前身、欧州共同体(EC)に加盟できた背景には、米ソ冷戦があった。
79年にソ連アフガニスタンに侵攻。ギリシャソ連黒海艦隊の出口に位置し
しかもロシアと同じ正教国のため「欧州陣営に引き込んでおかなければ
ソ連と接近し脅威になるという政治的思惑が働いた」
中央大学の田中素香教授は説明する。


こうした「特別扱い」はやがて、パパンドレウ・ギリシャ元首相が
「我が国は頭の先から足の先まで汚職まみれの国だ」
と公言するほどの汚職・脱税・公務員天国の素地になっていった。
労働人口の4分の1に達する公務員の平均月給は、民間若年層の2〜3倍。
「時間通りに出勤した手当」など破格の手当も多かったというから
財政破綻は時間の問題だった。


日経ヴェリタス 2012年6月17日付]