変化するお金のかたち

池上彰の必修教養講座
現代世界の歩き方(4) 変化するお金のかたち 2012/6/4付
http://www.nikkei.com/article/DGKDZO42136120S2A600C1TCP000/



一万円札は紙切れなのに、なぜ私たちはお金と思っているのでしょう。
それは、私たちがお金だと思っているからです。
ただの紙を、皆がお金だと思う「共同幻想」によって、お金はお金の価値を持っているのです。


お金の始まりは物々交換です。
交換したい人が一堂に会する方法をとります。
これが市場の発生です。
いつ開かれるかによって、四日市や五日市の名前に残っています。


こうした市が開かれても、物々交換は偶然性に左右されます。
そこで、「誰もが欲しがるもの」と交換する、という形をとるようになります。
これがお金の誕生です。


中国では子安貝(こやすがい)が使われました。
いまも財や買などお金に関する漢字には貝が入っています。
ローマでは兵士の給料として塩が支払われました。
塩はサラリウム。これがサラリーの語源です。


やがて、持ち運びが容易で
製造のための加工がしやすい金や銀、銅が使われるようになります。


金や銀は優れた貨幣でしたが、不便な点もあります。
交易が活発になると、支払金額が増えるからです。
大量の持ち運びは物騒で、途中で強盗に取られたら大変。
そこで両替商が登場しました。


金や銀を大量に保有する大金持ちに金や銀を預け
手数料を払って預かり証を発行してもらいます。商品の売買に預かり証を使えば
比較的安全に大金を持ち運ぶのと同じ効果が得られます。


預かり証を受け取った側も、すぐに換金することなく
別の支払いに使うことが可能です。
かくして預かり証自体が、まるで通貨のような働きをするようになります。
これが紙幣の誕生です。両替商は、明治になって銀行として発展します。