緩和ケアにおける漢方の役割

産婦人科漢方研究会 ランチョンセミナー
木下優子先生(日本大学医学部附属板橋病院緩和ケア室 室長)
http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/106/index_kiji.htm#p5



まず、全身倦怠感や免疫力の強化には十全大補湯が基本処方となる。
十全大補湯は補剤であり、身体を補い、体力をつける薬であり
悪性腫瘍に対して最もよく使用される処方。


全身倦怠感があり、食欲不振が強い場合は、補中益気湯を投与する。
十全大補湯が服用できない時や、まず食欲を回復させたい時に用いる。
食事が味気ない、味覚異常がある時にも有効である。
食欲不振が強い場合には補中益気湯が基本処方となる。


胃酸の逆流を伴う、胃の入り口でつかえてうまく入っていかない場合は
茯苓飲をお湯に溶かして投与する。
茯苓飲は器質的な狭窄があっても有効な場合がある。
服用後しばらくは食べられるというケースが多いため、食直前に投与することが多い。


食欲不振で、胃もたれ感が強い、胃の中に物が溜まって出て行かない場合は
六君子湯を投与する。脱水傾向が強い時には慎重投与する。


茯苓飲と六君子湯はともに嘔気・嘔吐にも有効である。
六君子湯は他の薬が効かない嘔気・嘔吐で著効を示すことがある。
気分の落ち込みが強い時には六君子湯香蘇散を併用する。


イレウスモルヒネによる便秘には大建中湯を投与する。
吃逆(しゃっくり)には茱萸を湯に溶かして内服させる。
1日目9包分3、2日目以降6包分3とする。


化学療法・放射線療法の副作用軽減には
いずれも開始前(できれば2週間以上)より十全大補湯を3包分3で投与する。

胸椎に放射線治療を行っている時の食道の不快感には、加味逍遙散を投与する。

カンプトテシンによる化学療法中の下痢には、半夏瀉心湯を3包分3で投与する。
これ以外の化学療法中の下痢には、啓脾湯を3包分3で投与する。

化学療法時のしびれには、牛車腎気丸を3包分3で投与する。
特にドセタキセルの副作用によるしびれに有効であり、年月が経っていても効くことがある。
効果を高めるために、ブシ末を併用することがある。
できればしびれが出る前から使用する。