国有資産を売却せよ

ギリシャは他山の石?
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110707/plt1107070930000-n1.htm


  元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一


ギリシャの財政危機は日本でもよく報道される。
ただ、そのほとんどは日本の財政危機をいうために
ギリシャのようになったら大変だ、という他山の石としてのものだ。


ギリシャは人口1100万人でGDPは2500億ユーロ(30兆円)と
神奈川県の人口900万人、県内総生産32兆円と同じような規模だ。
ただし、公務員が多い。
4人に1人が公務員で、しかも給料は民間の1・5倍ほど高い。
ギリシャの公的債務残高はGDPの1・3倍ほどで3300億ユーロ(40兆円)だ。


ギリシャが本当に財政危機になると
ユーロ諸国と国際通貨基金IMF)は救済融資を行った。
6月29日のウォールストリート・ジャーナル1面を飾った
ギリシャが迫られる壮大な民営化」によれば
ギリシャ財政再建計画には民営化や国有資産売却が盛り込まれているという。


2015年までに
債務残高の15%にあたる500億ユーロ(6兆円)の売却が期待されており
その中には、国営郵便局、水道会社、電力とガスの民営化・株式売却のほか
使われていない空港、古いオリンピック会場、ギリシャが誇る美しい海沿いの土地など
国有資産の売却もある。


財政再建では民営化や国有資産売却は定番メニューだ。
企業であっても債務圧縮のために資産を売却するのは当然のことだ。


しかし、なぜか日本では財政再建というと増税しか処方箋が出てこない。
国有資産がないのであればやむを得ないが、国のバランスシートを見ると
資産647兆円、負債1019兆円(10年3月末)。
資産がたっぷりある。


しかも資産のうち現金・有価証券111兆円、貸付金155兆円
運用寄託金121兆円、出資金58兆円と流動性の高い金融資産が多い。
このうち運用寄託金は将来の年金のためにとっておくとしても
貸付金や出資金などは天下り先の特殊法人などを民営化すればいい。


ギリシャですら郵便局の民営化が予定されているのに
日本で郵便局は民営化されて株式売却されるはずが
民主党への政権交代で再国有化に逆行してしまった。
これで、どうして国民に財政危機があると説得できるのか。
増税の前に、国有資産を売却するのが筋である。


ギリシャで債務残高の15%の国有資産の売却があるということは
日本で考えると150兆円の売却に相当する。
天下り先になっている特殊法人を全廃、民営化すると210兆円以上になる。
日本が財政危機であるというなら、そのくらいのことを増税の前に行うべきだ。
こうした民営化は財政危機でなくても日本経済のためになる。