甘草による副作用

ツムラ漢方スクエア 臨床医のための漢方Q&A
稲木一元先生 東京女子医科大学東洋医学研究所講師

http://www.tsumura.co.jp/password/magazine/098/qa.htm

◆Question

漢方薬に含まれる甘草で
高血圧、浮腫、低カリウム血症などの副作用が生じるとされていますが
これについて教えてください。


◆Anser

甘草に含まれるグリチルリチン酸などの物質は
11βヒドロキシステロイド脱水素酵素(11β-HSD)の活性を阻害するとされます。
この酵素は副腎皮質で生成されるヒドロコルチゾンを不活性なコルチゾンに変換する酵素
この変換が阻害されるとヒドロコルチゾンが増加、これによりミネラルコルチコイド受容体が刺激され
腎尿細管でのナトリウム再吸収とカリウム排泄とが促進されます。


その結果、低カリウム血症(血清カリウム値3.5mEq以下)とナトリウム・体液の貯留
浮腫、高血圧症、体重増加などが生じます(偽性アルドステロン症)


カリウム血症が中等度以上(2.5〜3mEq以下程度)では
脱力感、筋力低下、筋肉痛、血清CK上昇
さらには四肢痙攣、麻痺およびミオグロビン尿など
ミオパシーから横紋筋融解症にいたる症状があらわれ


さらに高度低カリウム血症(2〜2.5mEq以下程度)では
心室性および心房性不整脈、房室ブロックなどが生じやすくなり
重篤な例では、Torsades de Pointesなど、重篤不整脈が生じるとされています。


重篤な心疾患患者(とくにジギタリス製剤を投与中の者)
β2作動薬を服用している喘息患者、糖尿病患者では特に注意が必要でしょう。