糖尿病 8つの標的臓器

糖尿病治療薬の開発動向を展望,EASD副理事長Del Prato氏
EASD 2012プレスカンファレンス
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1210/1210024.html


欧州糖尿病学会(EASD 2012;10月1〜5日,ベルリン)における
プレスカンファレンス「2型糖尿病治療の最近の進展」では
EASD副理事長(イタリア・ピサ大学内分泌・代謝学教授)の
Stefano Del Prato氏が糖尿病治療薬の開発動向を概説。
PPARαとPPARγをともに活性化させる薬剤などが注目されるとした。

8つの標的への治療法が整いつつあるのが現段階

糖尿病治療薬は最近10年程度で急速に拡充された。
「現在でも,糖尿病の治療は複雑な状況」と表現しているが、その複雑さは
「治療薬が急に増えたからではなく,標的にすべき臓器が少なくとも8つあるため」
とDel Prato氏は説明する。


その8つの標的臓器(病態)とは
(1) 膵β細胞(インスリン分泌不全)
(2) 膵α細胞(グルカゴン分泌過剰)
(3)  小腸(インクレチン作用低下)
(4) 肝臓(糖産生過剰)
(5) 脳(神経伝達不全)
(6) 骨格筋(糖の取り込み減少)
(7) 腎臓(糖再吸収過剰)
(8) 脂肪(脂肪分解増強)―を指す。


最近の薬剤開発の結果
複数の薬剤を駆使すれば,全ての機序に対応できるようになってきた。
(1)(2)(3)にはインクレチン関連薬
(4)にはメトホルミン
(6)や(8)にはチアゾリジン薬
(7)にはナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬といった具合だ。
現在は,それぞれの標的に対する治療のめどが立ちつつある段階といえる。

注目されるチアゾリジン薬の“進化版”

Del Prato氏は今後注目される新薬の開発動向として
PPARαとPPARγともに活性化させる aleglitazar を紹介した。
PPARγ作動薬はトログリタゾンとロシグリタゾンが安全性問題で市場から消え
現在はピオグリタゾンのみとなっている。
ピオグリタゾンにもがんリスクなど安全性への懸念が指摘されているが
「血糖低下作用とともに心血管疾患リスクの低減が期待できるため
PPARファミリーを標的とする治療にはさらなる可能性が秘められている」と同氏。
開発中のaleglitazarはPPARα活性化作用も有するため
脂肪酸分解促進(抑制)による動脈硬化の進展抑制が期待できる。