RYO ジジイからコクられる の巻

何かのキッカケで
患者から気に入られることがある。


たとえば、あるお婆が
「 最近、唾液が出なくなって、ご飯がおいしくない 」
と窓口で俺に訴えた。


お婆の処方を見るとバップフォーが処方されていた。
「 この尿漏れの薬にはそういう副作用がありますなー 」


俺の指摘で、お婆がバップフォーをやめたら、口渇は止まったそうだ。
そのことで、そのお婆は会うたびに俺に礼を言う。
(尿漏れがどうなったのかは知らないが)

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きのう、ほとんど休憩もとれずコキ使われ、疲れて職場を出た俺は
ビールを飲むぞと決めて、足早に歩いていたところ、ジジイに声を掛けられた。


「 RYO先生、ジュースをおごってあげるよ 」
窓口でよく会う患者だが、名前は覚えていない。


「 ジュースはいらないっす。僕は今からビールを買いに行きます 」
「 じゃ、ビールを買ってやる 」
「 患者さんから物をもらっちゃいけないんすよ 」
「 わしゃ、患者ぢゃない。病気は治ったんぢゃ 」
「 お気持ちだけで充分です 」


ジジイは俺の腕をグッと掴んだ。
「 わしゃ、あんたが好きなんぢゃ! 」
ジジイの手は汗ばんでいる。


俺はジジイの顔をあらためて見る。
頭は禿げ上がっている。
こいつホモか?
うー、寒気がする。


「もうすぐAコープが閉まるから、早く行かなきゃ!」
俺はジジイの手を振り払ってAコープに逃げ込んだ。


かわいいお婆ちゃんならコクられてもいいが
ジジイはイヤだ。