鴻海(ホンハイ)

ずる賢いシャープの提携相手…役立たずはポイ捨ても
大前研一のIT時評
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20120408/ecn1204080714000-n1.htm



シャープは先日、電子機器の受託製造で世界最大手の
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と資本業務提携すると発表した。
鴻海グループがシャープに669億円出資し、出資比率9・99%の筆頭株主になる。
これはシャープにとって、どういう意味を持つのか?


シャープは主力の液晶テレビの競争激化や円高で業績が悪化し
2012年3月期の損失は過去最大の2900億円に陥った。
一方、鴻海の純利益は2159億円だ。


売り上げも、シャープの約2兆5000億円に対し
鴻海はアップルのiPodシリーズの製造を請け負うなど好業績で約3兆5000億円。
時価総額も7000億円を切るシャープに対し、鴻海は3兆6000億円。
数字を見る限り、今回の提携はもうほとんど「買収」に近い。


シャープの株価は、資本提携で跳ね上がった。
しかし、鴻海はそんなに甘い会社ではない。


ここ10年で
世界トップクラスのOEM(相手先ブランド名製造)メーカーになった鴻海について
私は「ズル賢い」という印象を持っている。


OEMは他社ブランド製品を製造するわけだが
それを生業にしているメーカーが自分のブランドを持つと委託している相手から警戒される。
そこで鴻海は、台湾系の米国液晶テレビ販売会社
「VIZIO(ビジオ)」に資本参加すると同時に製造も担当し
これを短期間でアメリカで売り上げナンバーワンにした。
VIZIOは実質的には鴻海の傘下。
つまり、VIZIOは鴻海の製品ということになる。ズルい戦略だ。


シャープと提携した理由も似たようなものだろう。
鴻海はおそらく、アップルが液晶テレビに本格参入したときには
シャープの技術をとことん使ってスマホ型のテレビを製造するはずだ。
アップルから「これは鴻海のテレビブランドではないか」と指摘されても
「いや、シャープはまったくの別会社」と言い訳できる。
つまり、シャープを隠れみのにアップルともうまくつき合おうとしているのだと思う。


鴻海はすでにパネルの高騰を見込んで
シャープのテレビ用液晶パネルの主力拠点である大阪・堺工場を運営する
シャープ子会社の株式約46%を660億円で取得している。
これは鴻海創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)会長が個人でやっていることだとしている。


こういうしたたかな企業だから
気づいたらシャープは鴻海に何ひとつ逆らえない状態になっているだろう。
とくに堺工場は生産量の半分を鴻海が引き受けることになっている。
シャープと対立すれば鴻海は別の安いところから買うだろうから
生殺与奪の支配権も譲った、とみるべきだ。
引き取らなかった場合のペナルティーまで契約で決められているなら
重要開示事項だからシャープは公開すべきだ。


唯我独尊の郭会長はシャープを実質的に支配し
役に立つ限りはシャープ・ブランドで作らせ、役に立たなくなってきたらサヨナラ…。
そのとき、シャープは足腰立たなくなっているということも考えられる。


「いくらなんでも、そこまでやるだろうか」という声も聞こえてきそうだが
これまで多くの台湾系の会社を見てきた私から言わせると
鴻海という会社は“いいとこ取り”で性格もズルい。
果たしてシャープは、鴻海のそういう性格まで分かったうえで、提携したのだろうか。