Lymphoma


http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/di/diquiz/ より一部改変

◆Question

高尿酸血症で通院していた男性が
大学病院の処方せんを持って薬局を訪れ
次のような質問をしました。


悪性リンパ腫と診断され、点滴治療をすることになりました。
病院の先生から
「尿酸値を下げる薬は、今までとは別のものに変えましょう」
と言われました。
血液検査では尿酸値は高くなかったのに、なぜ新しい薬に変わったのでしょうか?

《処方せん》
ザイロリック錠100 3錠 1日3回 毎食後 21日分
プレドニン錠5mg 20錠 1日2回 朝昼食後 5日分 
ほか省略

前回はユリノーム

◆Anser

治療を始めると、増えすぎた腫瘍細胞が急激に壊れます。
これは治療の効果が出ているということなのですが
一方で、細胞内の成分が大量に血中に流れ出します。


細胞内には、尿酸の元となる成分が含まれているので
結果として、尿酸量が増え過ぎて腎臓に負担がかかり
最悪の場合、腎不全を起こすことがあります。


これの予防には、尿酸の生成を抑えるザイロリックというお薬の方が
今までのユリノームより適しているのです。

◆解説

一般に悪性腫瘍では、細胞の増殖と崩壊が繰り返され
これに伴って核酸の合成と分解が亢進する。


核酸のプリン塩基は尿酸に代謝されるため
結果として、悪性腫瘍は尿酸産生を亢進させることが知られている。


加えて、抗癌剤投与により腫瘍細胞が急激に崩壊すると
大量に尿酸が産生され、悪性リンパ腫など造血器腫瘍性疾患の
患者の60〜70%が高尿酸血症を起こすとの報告がある。


以上の理由から、悪性リンパ腫の治療時は
血中・尿中の尿酸値が急激に高まり、重篤な場合
尿酸が尿細管を閉塞して急性腎不全を発症することがある。


悪性リンパ腫の中でも増殖が早いT-リンパ芽球性リンパ腫や
腫瘍の量が多い場合などで、リスクが高い。
尿酸値が急に上昇して、痛風発作を起こす例もある。


これを予防するために、尿酸値が正常であっても、通常
尿酸生成抑制剤のアロプリノールが1日300〜600mg投与される。


一方、尿酸排泄促進剤のユリノームは尿酸の排泄量増大により
腎機能を悪化させる可能性があるため
悪性リンパ腫治療時の高尿酸血症には向いていない。


なお、患者さんに大量のプレドニンが処方されているのは
抗癌剤との併用で抗腫瘍効果を増強するためと考えられる。


標準的な化学療法であるCHOP療法
(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)では
プレドニゾロン1日100mgが5日間処方される。