エビリファイ少量投与

アリピプラゾール少量投与の狙いとは
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/diquiz/202104/569770.html?n_cid=nbpnmo_mled

17歳の男性Uさんが、心療内科クリニックを受診後に母親と来局しました。
 母親「最近、自室に引きこもることが増えて……。
 生活も昼夜逆転しているようで朝起きられず、学校も休みがちなんです」

[処方箋]
【般】セルトラリン錠25mg 1回1錠(1日1錠)
【般】アリピプラゾール錠3mg 1回0.5錠(1日0.5錠)
1日1回 就寝前 14日分
※今回からアリピプラゾール(商品名エビリファイ)が追加された。

Q アリピプラゾールに関する記述として、正しいものを選べ。

(1)低用量投与によるドパミン系の賦活作用が報告されている
(2)セルトラリンとの併用時には少量で投与を開始する必要がある
(3)半減期が長いため、低用量投与による効果発現には2週間ほどを要するとされる
(4)食事の影響を受けるため、用量に関わらず就寝前の服用が望ましい

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https://www.nikkeibpm.co.jp/item/ndi/831/saishin.html

こんな服薬指導を

今回から追加されたアリピプラゾールは、
通常よりも少ない量で服用すると
睡眠時間を短縮して起床時間を調節するという働きが期待できます。
また、不安感を解消し、気分を明るくする効果もあると言われています。
ただし効果が表れる量には個人差もあり、
投与量によってはかえって昼間に眠くなってしまうことがあります。
眠気が強すぎて生活に支障が出るようでしたら、先生にお知らせください。

A(1)低用量投与によるドパミン系の賦活作用が報告されている

 睡眠障害は、入眠障害(寝付きが悪い)、中途覚醒(途中で目覚める)、早朝覚醒(早朝に目覚め、二度寝ができない)、熟眠困難(寝た気がしない)といった睡眠の質の悪化を主体とするものが多くを占める。近年では、望むべき時間に入眠や覚醒ができなくなる睡眠障害の患者も増えている。夜間のシフトで働く人の増加や、自身の趣味に没頭し夜更かしをする若年者が増えていることなどが、1つの原因として考えられている。
 これらの障害の特徴は、入眠できないことよりも、望む時間に覚醒できない点が問題であり、学校に行けない、会社に行けないなど社会生活に支障を来す。近年、こうした障害は概日リズム障害(睡眠・覚醒リズム障害)と分類されている。
 概日リズム障害のうち、就寝時間が遅く(入眠困難)、本来目覚めるべき時間より2時間以上遅れる(覚醒困難)状態が慢性的に持続するものを睡眠相後退症候群(Delayed sleepphase syndrome:DSPS)と呼ぶ。日本における睡眠障害の有症率は、慢性不眠で約20%、DSPSで0.13~0.40%と推定されており、思春期から青年期が好発年齢となる。
 DSPSの治療としては、まず生活習慣の見直し(就寝2時間前の運動は避ける、就寝前の電子機器の使用を避ける、カフェイン摂取を抑える、休日も平日と同じ時間に起床する、目覚まし時計を使用するなど)であり、それらを行っても改善がみられない場合には薬物治療の適応となる。
 DSPSの薬物治療においては、ラメルテオン(商品名ロゼレム)、メラトニン(メラトベル)といったメラトニン受容体作動薬の投与が適応となる3)。その他、今回のUさんのように抑うつ症状を伴うDSPSについては、非定型抗精神病薬であるアリピプラゾール(エビリファイ他)の1.5~3mg/日の少量投与が、夜間睡眠の延長を短縮できるとの国内の報告がある。
 抑うつ症状を伴うDSPS患者17人の検討では、睡眠時間は9時間から7時間(中央値)に減少し(p=0.001)、就寝時刻は0時半から23時に早まり(p=0.043)、起床時刻も9時から6時に早まった(p=0.0007)と報告されている。アリピプラゾールは消失半減期が約65時間と長いため、定常状態に達するまで14日間を要するとされているが、これらの研究では1週間程度で効果が認められた。
 アリピプラゾールの作用機序としては、ドパミン神経伝達が亢進したD2受容体へは拮抗作用を示す。一方、ドパミン神経伝達が低下したD2受容体へは適度に活性化する部分アゴニスト(パーシャルアゴニスト)であり、低用量と中等量以上ではその薬理作用が異なると言われている。
 低用量ではシナプス前の自己受容体であるD2受容体およびD3受容体に働きアゴニスト作用を示すが、中等量以上ではシナプス後のD2受容体にも働きアンタゴニストとして作用するため鎮静作用が強くなってしまう。この少量投与でのドパミン系の賦活作用が睡眠時間の短縮やうつ症状の改善に寄与している可能性が示唆されている。
 ただし、効果がみられる用量には個人差があると考えられるため、Uさんに対しては、鎮静作用による昼間の眠気が出る可能性についても服薬指導時に伝えておきたい。