酸棗仁湯を用いたベンゾジアゼピン系睡眠薬の減量断薬方法

高齢者の睡眠
ベンゾジアゼピン睡眠薬
~「効いて当たり前」の功罪に対峙する~.
堀口淳先生 島根大学 名誉教授・慶應義塾大学 客員教授
https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/373/koureisha-373.htm
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ベンジアゼピン系睡眠薬の減量・休薬のワンポイント

図に著者が実践しているベンジアゼピン系睡眠薬の減量から休薬、
そして断薬する方法を記載した。
これはあくまでも理想的な方法である。
10年も20年も長期間にわたって
ベンジアゼピン系睡眠薬を服薬してきた患者の場合には、
医として腰を据えて患者と汗を流す努力を惜しんではならない。

図のように、著者は酸棗仁湯(さんそうにんとう)を用いる場合が多い。
不眠症に対する漢方薬の中では最も標準的であり、保険適応もある。
時には抑肝散や抑肝散加陳皮半夏あるいは加味帰脾湯を用いる場合もある。
酸棗仁湯は夕食前後と就寝前の2包が望ましいが、就寝前だけでも良い。
効果の発現には個人差があるが、経験的には3週間から4週間である。

図に示したように、
まずは現在服薬中の睡眠薬の上に酸棗仁湯を追加投与する作業から始めるので、
患者の抵抗感がみられる場合がしばしば経験される。
しかし漢方薬は薬害が少ないことや、減量・中止の大きな価値、
すなわち「現在は副作用の自覚はなくても、
年とともにふらついたりなどの副作用の発現の危険性が回避できる」
ことについて十分説明すれば、大抵の患者は応じてくれる。
その後の方法は図のとおりであるが、
長期間にわたって睡眠薬を服用している患者の場合には、
1錠減薬できても、再び自ら2錠に戻していたりするなど、
困難な場合も多いが、何よりも患者の不安に共感しながら、
粘り強くチャレンジすることが成功の秘訣である。
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