透析治療の原因となる「IgA腎症」 早期発見・検査・治療法を解説 https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1160.html
透析治療の大きな原因の1つ 「IgA腎症」
現在、透析治療を受けている患者さんは、国内で約34万人います。
その3割近くを占めるのが「IgA腎症」という病気です。
IgA腎症が起こるしくみ
「IgA」とは、細菌やウイルスなどから体を守る免疫物質の一種で、
のどなどの粘膜の表面で活躍します。
たとえば、かぜのウイルスなどが鼻や口の中に侵入すると、
IgAがウイルスにくっついて無力化します。
そのIgAが、血液中でかたまりをつくることがあります。
そのかたまりが血流にのって腎臓まで運ばれると、
腎臓の組織を攻撃し炎症が起こります。これが「IgA腎症」です。
炎症によって腎臓の細い血管が破れると、
血液が尿中にもれて「血尿」が起こります。
炎症が進行すると、体に必要なたんぱくが尿中にもれ出して、
「たんぱく尿」が現れます。
IgA腎症は「指定難病」
腎臓病の多くは、
糖尿病や高血圧など、なんらかの病気が原因で起こります。
ところがIgA腎症の場合、
病気が原因とならないのが特徴とされ、
原因がはっきりわかっていません。
重症な場合は完治につながる治療法がないことから、
指定難病に認定されています。
IgA腎症は、特に20~30歳代に多くみられますが、
子どもも含めてどの年代でも起こります。
原因について、現在有力な説が、
のどにある「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」の
免疫の異常が関係しているということです。
口蓋扁桃は、のどの奥の両側にある組織で、
細菌やウイルスが気管や肺に侵入するのを防ぐ働きがあります。
一般には扁桃腺とも呼ばれます。
かぜに伴い扁桃炎などを起こすと、
口の中に住み着いている歯周病菌などの細菌が活発になり、
それをきっかけにIgAに異変が起こって、
IgA腎症を発症すると考えられています。
また、遺伝的な要因も関わっていると考えられており、
IgA腎症の約10%は家族性のものと考えられています。
IgA腎症は「尿検査」で早期発見できる
IgA腎症の多くは、自覚症状がありません。
初期からある症状は、肉眼ではわからないほど微量の血尿です。
進行すると、たんぱく尿が出るようになりますが、
この段階まで至るとかなり進行していて、完治させることが難しくなります。
そのため、IgA腎症は、早期発見することがとても重要です。
その鍵となるのが「尿検査」です。
尿検査の項目のうち、「尿潜血」では血尿を調べ、
「尿たんぱく」では尿に含まれるたんぱくを調べます。
尿潜血が陽性だったり、
尿たんぱくが「±」あるいは「+」以上だったりした場合は、
IgA腎症を含め腎臓病が疑われます。
IgA腎症を確定診断する検査
**IgA腎症の治療
早期の場合の治療
IgA腎症の一部の患者さんでは、
腎機能の低下がみられず、自然に症状が治まることがあります。
たんぱく尿の量が少なく、血圧が低く抑えられている場合は、
腎機能が維持されやすいと考えられるため、経過観察となることがあります。
しかし、尿たんぱくや血圧の数値がよくないなど、
腎機能の低下が進行しやすい状態の場合は、
進行度に応じた治療が行われます。
早期の場合、免疫の働きを抑える治療が中心です。
「副腎皮質ステロイド薬を8か月間のみ続ける治療」や
「扁桃を摘出する手術」
「扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用」などが行われます。
扁桃摘出術の目的は、扁桃に歯周病菌などが感染してIgAが増え、
腎機能の低下が進行しやすくなるのを防ぐことです。
扁桃を摘出することによる影響はほとんどありませんが、
まれに味覚異常や、手術後に多量の出血が起こることがあります。
しかし、IgA腎症が進行するリスクに比べて効果が大きく、
早期であればそれだけで完治することもあります。
現在、早期のIgA腎症の治療の主流となりつつあるのが
ステロイドパルス療法とは、
副腎皮質ステロイド薬の点滴を1か月おきに3日間続けながら、
2日に一度のみ薬を服用する治療法で、6か月間行います。