感染症専門医師が教える、新型コロナウイルスについて今知っておくべきこと

新型コロナウイルス
感染症専門医師が教える、新型肺炎について今知っておくべきこと
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e2a8d53c5b6779e9c30527b


高山義浩 先生
沖縄県立中部病院感染症内科

問1 コロナウイルスによる感染症とは、どのような病気なのですか?

コロナウイルスというのは、
ヒトや動物のあいだで感染症を引き起こす病原体で、
これまで6種類が知られていました。
うち4種類は、
咳や咽頭痛などの上気道症状しか引き起こさないウイルスで、
私たちが「風邪」と呼んでいる病気の10~15%程度は
コロナウイルスによるものです。
あとの2種類は、
深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるウイルスで、
重症急性呼吸器症候群SARS)と
中東呼吸器症候群(MERS)として世界的に流行しました。

SARSは、コウモリからヒトへと感染して、
2002年11月から2003年7月のあいだに
8,069人の感染(疑い例を含む)が報告され、
そのうち775人が死亡しています(致命率 9.6%)。
ただし、死亡した人の多くが
高齢者もしくは基礎疾患を有する人で、
子供は感染しても軽症だったことが特徴です。

MERSは、ヒトコブラクダからヒトへと感染して、
これまでに2,494人の感染が報告され、
そのうち858人が死亡しています(致命率34.4%)。
重症化するのは、
高齢者や基礎疾患を有する人であろうと考えられています。

いま、中国で流行している新型コロナウイルスによる肺炎とは、
これまで知られていなかった新しいウイルスによる感染症です。
断片的な臨床情報しか伝わってきていませんが、
主たる症状は発熱であり、
一部に呼吸困難を訴える患者もいるようです。
胸部レントゲンでは肺炎所見があるようですが、現時点では、
病院を訪れる程度に症状のある患者に検査を実施しているため、
肺炎のない風邪程度の感染者がどれくらいいるのか、
まだ分かっていません。

予断を許さぬ状況ではありますが、
これまでの経験に照らせば、一定の数の軽症者はいるでしょうし、
とくに重症化するのは、
高齢者や基礎疾患を有する人ではないかと思われます。

問2 いま流行している新型コロナウイルスへは、どのようにして感染するのですか?

何かの野生動物が感染源だろうと推測されます。
当初は、武漢市内の海鮮市場に出入りしていた人に
感染者が集中していたことから、そこで処理された
動物由来の飛沫を吸入したり、体液に接触したことが原因かもしれません。
ただ、残念ながら、現時点では動物の種類は同定できていません。

加えて、
ヒトからヒトへの感染が起きていることも確実となっています。
感染している人の咳から生じる「しぶき」を吸入したり、
ウイルスが含まれる喀痰や唾液などに触れた手で
口や鼻、目を触ったことで感染が起きているものと考えられます。

同居する家族やケアを提供した医療従事者への感染が確認されていますが、
レストランや電車などで空間を同じくしただけで
感染しうるかは明らかではありません。

問3 新型コロナウイルスに感染した場合には、死亡することもあるのでしょうか?

これまで中国本土で感染が確認された830人のうち、
26人の死亡が公表されています(1月24日午前0時時点)。
ただし、子供や基礎疾患のない人にとっても、
死亡するリスクがあるかについては明らかではありません。

また、感染していても軽症で受診していない方も多いはずで、
母数(感染者数)が分かっていないことも踏まえる必要があります。
つまり、致命率 3.1%(=26/830)と計算して
単純に比較することはできませんが、
現時点の情報からすると、
SARS(致命率9.6%)やMERS(同 34.4%)ほどの
病原性はないのかもしれません。

ただし、こうした新興のウイルスは、
変異を繰り返しながらヒトへの適応性を高めることがあります。
つまり、今後、高い感染力により爆発的に広がったり、
病原性が増して死亡者が増える可能性は残されており、
国際的な連携のもと注意深く監視していくことが必要です。

問4 ここ数日のうちに、患者数が急速に増加しているようです。ウイルスがヒトへの適合性を高める遺伝子変異をして、感染力が高まっているのでしょうか?

その可能性はあります。
ただし、最近の中国における報告数が増加しているのは、
検査体制が強化されたことにも理由があるでしょう。
つまり、これまで調べていなかった人たちについても、
検査が行われるようになったため、
報告数が急増しているものと考えられます。

患者と接点が見当たらない人、あるいは、
接点があっても(ケアに関わっていないなど)
濃厚なものではない人から感染者が多発するようになったとき、
このウイルスの感染力が高まっていると判断されます。
現時点では、そこまでの感染力は確認されていません。

問5 新型コロナウイルスに有効な治療薬やワクチンはあるのですか?

コロナウイルスに対する特効薬はありません。

問6 新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、どのような対策をとればよいのでしょうか?

現時点では、
患者を診療する可能性のある医療従事者でない限り、
日本で暮らしている一般の方が特別な対策をとる必要はありません。
あえて挙げるとすれば、咳エチケットや手洗いなど
日頃の感染対策をしっかりすることでしょう。