ベンゾジアゼピンは1カ月で半数が依存性に

ベンゾジアゼピンは1カ月で半数が依存性に
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正先生
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2017/0704508935/?utm_source=mail&utm_medium=recent&utm_campaign=mailmag170705&mi=00128000005wKfsAAE&fl=1


 N Engl J Med (2017; 376: 1147-1157)に
ベンゾジアゼピン (BZD) 依存症の治療」の総説がありました。
著者はドイツ・Ludwig Maximilian University精神科のMichael Soyka氏です。
最重要点は下記7点です。

  • BZDは1カ月以上の使用で半数が依存性に。半減期が短いほど依存性は高い
  • 使用禁止は重症筋無力症、小脳・脊髄失調、睡眠時無呼吸、慢性肺疾患、狭隅角緑内障
  • 離脱症状は痙攣が極めて一般的、聴覚過敏・羞明はBZD離脱に特異的
  • 離脱症状は短時間作用性BZDが2〜3日、長時間作用性が5〜10日で発現
  • BZD減量は4〜8週かけ毎週5割 or 2週ごと10〜25%減らせ
  • 数種のBZDはジアゼパム1種にまとめよ
  • 不眠に睡眠制限、大食い避け、定時就寝、昼寝避け、寝室静かに、TV・電灯避けよ



以前、米国で家庭医として開業されている日本人の先生とお話しして
大変驚いたことがあります。その先生のいらっしゃる州では、
そもそも外来でBZDを処方できないというのです。
BZDは多彩な副作用があることから州法で安易な処方が禁止されているのです。


ですから、その先生は外来では眠剤としては、
嗜癖性のないラメルテオン(商品名ロゼレム) か、
トラゾドンデジレル抗うつ薬)を使用するのですが、
デジレルの方が安価なのでもっぱらデジレルを処方しているというのです。


この総説によるとBZDは2〜4週の短期間の使用なら比較的安全ですが、
それ以上では安全性は保障されず1カ月以上の使用で
実に半数に依存性が見られるとのことです。
わずか1カ月の処方で半数に依存性が生じるということに驚きです。


この総説によると、基本的に全てのBZDは抗不安作用、
催眠作用、筋弛緩作用、抗痙攣作用、健忘作用があります。
BZDは薬理学的に抗不安作用と催眠作用をクリアカットに分けられないのです。
そして副作用としては
傾眠、無気力、疲労感、過鎮静、昏迷、翌日までの持ち越し、集中力低下、
依存性、筋弛緩、失調、中止による不眠、運転障害、交通事故、転倒骨折があります。


ここまで読んでギクッとしたのは、
最近ニュースでよく話題になる高齢者の交通事故です。
認知症だけが交通事故の原因ではなく、
私たちが安易に処方しているBZDによる可能性はないのでしょうか? 
BZDは認知能低下、記憶障害、集中力低下を起こします。
アクセルとブレーキの踏み間違いなどありそうなことです。