美容皮膚科医が教える! タバコの害と美容への悪影響

美容皮膚科医が教える! タバコの害と美容への悪影響
http://allabout.co.jp/gm/gc/463305/



双子の姉妹。喫煙歴などの生活習慣によってこれだけ外見に変化が現れてくる
(出典:American Society of Plastic Surgeons、2009)


■世界的に見て低い日本の禁煙意識
2016年にJTが行った日本の喫煙率調査は、男性30%、女性10%という結果でした。
一見低そうな値ですが、特に女性は対前年比で6万人も増加しており、
日本は海外と比べてもかなり禁煙に対する意識の低い国に入っています。


■喫煙により肌がダメージを受けていることをご存じですか?
筆者は日々美容に携わり、医療技術のアップをはかり精一杯治療に取り組んでいますが、
治療をお受けになる人が喫煙している場合にはその効果が現れにくいため、
残念に思うことがあります。


タバコに含まれている約200種類の化学物質を毎日吸っている場合、
平均寿命が10歳以上短くなるのですから、
お肌の寿命も吸わない方よりかなり早まること、
つまり早く老化が起こることはおわかりかと思います。


「禁煙」は多くの疾病予防効果ばかりでなく、
私たちが携わる美容の観点からも
とてもとても大切な美肌キープの要素であると考えています。
ここでは、禁煙外来も行う美容皮膚科医の立場として
喫煙による肌のダメージについてお話しします。


■喫煙は美肌を遠ざけるばかり!
喫煙は自律神経の乱れやニコチンの影響によって血管の収縮を起こし、
血流量が低下し、細胞の障害を受けることになります。


また、喫煙者の吐く息には一酸化炭素が多くみられますが、
この一酸化炭素は、酸素の結合部位を占領してしまうため、
末梢まで十分な酸素が届けられなくなり、慢性的な酸素欠乏の状態となってしまうのです。


美肌のためにみなさんがよく摂取されるビタミンCも、
喫煙によって生じた活性酸素の消去のために大量に消費されるため、
健康な肌を維持する必要量を確保することが難しくなります。


■双子の顔が喫煙習慣でこんなに変わる!
双子の写真をご覧ください。
右側の女性は、紫外線にあたる機会が多いことに加え、喫煙歴があります。
同じ歳とは思えないほど、顔貌に違いが見られます。


その顔貌を「スモーカーズフェイス」、
さらに、深いシワを「スモーカーズリンクル」、
口回りの目立つ縦ジワを「スモーカーズライン」、
顔色が悪くシワの目立つ顔貌を「シガレット・スキン」と呼ぶこともあります。


一般的に、ヘビースモーカーでは5倍程度シワの発生頻度が高くなり、
50歳で65歳程度の肌になると言われ、
紫外線障害と同じ程度のシワを形成すると言われています。
またお顔の印象にとって大切な首からデコルテラインのしわも増えるため、
筆者はそれを「スモーカーズネック」と呼んでいます。


※参考文献
薗 はじめ:スモーカーズフェイス.禁煙学 改訂2版,日本禁煙学会 編,p.63-65,南山堂,2010.
Model D : Smoker’s face : an underrated clinical skin Br Med J
(Clin Res Ed),291 (6511) : 1760-1762,1985.


■健康的な赤い口唇が、喫煙で黒くなる!
「ブラックリップ」をご存じでしょうか。
唇の色が不自然に黒ずんでいる、そんな人を見たことはありませんか。
まれにアトピー性皮膚炎で下唇が黒くなることもありますが、
一般的に、喫煙していると黒ずんでくることがあります。
特に下唇が黒く変色します。
こういった色が変化した唇は「ブラックリップ」と言われています。


これはニコチンによるメラノサイトの刺激、
末梢の循環不良による血管収縮などが原因と考えられています。
禁煙する2〜3か月で内側から赤みが出てきますが、
ある程度変色の進んだものは黒いまま戻りません。


また、重度の「受動喫煙」を受けていた場合も
程度はあれど同じように下唇が黒く変色することがあるので、
喫煙者のいる環境で生活をする場合も注意が必要です。


■喫煙時のお口の中は、「水を入れた灰皿」状態!
水を張った灰皿にタバコをつけておくとどうなりますか。
水が茶色くなるのはご存じですね。
では、このタバコで茶色く染まった水を飲むことはできるでしょうか。
普通の人は到底できないですよね。


お口の中には唾液がありますが、
タバコを吸った後その唾液はどこにいくか考えてみてください。
すべての唾液を吐き出すことは不可能です。
唾液は自然と体内に取り込まれていきます。
ということで、タバコによって引き起こされるのは喉頭がん、肺がんだけではありません。
食道がん胃がんをはじめ、肝臓がん、腎臓がんなどほぼ全身のがんの要因にもなるのです。


喫煙者に多大な害をもたらすタバコですが、
喫煙者と一緒にいる非喫煙者への影響はどうなのでしょうか。
副流煙」と「呼出煙」について解説します。


■空気清浄器で受動喫煙から逃れられる?
「うちには空気清浄器があるから大丈夫!」
なんて思っている方も多いかもしれませんが、
タバコの煙の有害成分は、ほとんどが気体とPM2.5などの極小微粒子で、
空気清浄器で除去できるのは、微細な粒子ですので、
タバコの煙に含まれる有害物質を完全に除去することは不可能なのです。


吉田 貴子先生
皮膚科・美容皮膚科医。渋谷スキンクリニック院長。一般皮膚科と美容皮膚科の両方を開設し、男女問わずあらゆる肌の悩みに向き合う。なかでもニキビ治療を得意とし、しつこいニキビや深刻なニキビ痕をケア。保険診療の他、自費治療での美容皮膚科診療、メディカルエステを組み合わせ、ニキビケアに取り組んでいる。
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