270社最高益

逆境は商機、270社最高益 4〜6月
全体では2割減益
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD10H89_Q6A810C1EA2000/



上場企業の2016年4〜6月期決算で、約270社が経常最高益を更新した。
人手不足に柔軟に対応した人材派遣会社や、
IT(情報技術)を生産性改善につなげた企業の好調さが目立つ。
円高などが重荷で3月期企業全体では2割弱の経常減益となる。
そのなかでも、逆境をむしろ商機へと転じる強さを持った企業が業績を下支えしている。


■人手不足に対応
10日までに16年4〜6月期決算を発表した1500社強を日本経済新聞が集計したところ、
およそ6社に1社にあたる274社が経常最高益を更新したことが分かった。
建設や鉄道、食品などが多い。


「金融を除く全ての業種で引き合いが非常に強い」。
10日の決算発表で人材派遣大手、テンプホールディングスの水田正道社長は笑顔を見せた。
人手不足を背景に東京を中心に転職の仲介や人材派遣が伸びた。
派遣社員のツテで新たな派遣社員を探す取り組みも奏功し、
4〜6月期の経常利益は44%増え、17年3月期通期の業績予想も上方修正した。


建設業は人手不足の続く代表的な業種だ。
大林組は作業員の待遇を改善して人材確保に注力した。
工場で事前に組み立てた部材を使うなど省力化の工夫も凝らし、経常利益は32%増えた。


少子高齢化が進むなか、高齢者のニーズをつかんだ会社も好調だ。
カルビーはシリアル「フルグラ」の塩分の少なさをスーパーの店頭で訴えたところ、
高血圧に悩む高齢者の購入が増えた。


■生産性を改善
業務効率の改善を進め、利益を伸ばした企業もある。
日立物流人工知能(AI)を使って作業員の動線を見直した。
荷動きは低調だが、「作業効率の改善が増益に貢献した」(林伸和執行役常務)。


生産性改善のニーズはIT投資にも表れている。
製造業やサービス業のシステム開発投資は高水準で推移し、
野村総合研究所やSCSK、新日鉄住金ソリューションズなど
システム開発大手はそろって最高益を更新した。


■商品力を磨く
独自技術や商品力で市場を切り開いた企業も好調だ。
東レリチウムイオン電池を軽量・大容量化できる部材を開発し、
「自動車の環境対応ニーズをつかんだ」(福田雄二取締役)。
ほかにも紙おむつ用の不織布の肌触りを改良したり、
コンデンサーの小型化につながるフィルムを開発したりして、
採算と販売数量の両方を伸ばした。円高の影響を吸収し、経常利益は8%増えた。


スタートトゥデイは衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を手掛け、
アパレル電子商取引(EC)サイトでは圧倒的なシェアを誇る。
個人消費全体でみれば低調な状態が続いているものの、
のサイトに出店する企業数や利用者は増加傾向にあり、
4〜6月期としては4年連続で最高益を更新した。
カカクコムは飲食店情報サイト「食べログ」が収益をけん引した。


日本企業を取り巻く収益環境は引き続き厳しい。
内需企業には消費意欲の低迷、輸出企業には円高が重荷だ。
英国の欧州連合(EU)離脱決定などを受け、世界経済の先行きも見通しづらい。
それだけに、人口減少などの構造問題から新たなニーズを見いだすような
創意工夫が企業には今まで以上に求められている。