蚊の退治 遺伝子狙え

蚊の退治 遺伝子狙え
組み換え、感染症媒介防ぐ
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO04951680W6A710C1MY1000/



「蚊は年に約72万人の命を奪い、人類にとって最も恐ろしい生物だ」。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は2014年、自身のブログで人々に注意を促した。


英国のバイオベンチャーのオキシテックは、
遺伝子を組み換えたオスの蚊が野生のメスと交尾すると、
卵から幼虫(ボウフラ)がふ化しても成虫になる前に死ぬようにした。
成長を邪魔する有害なたんぱく質が卵の中で作られるからだ。


同社はデング熱やジカ熱を媒介するネッタイシマカの駆除を目指している。
人を刺すのはメスなので、不妊化したオスを野外に放っても刺される心配はないという。


ブラジル政府の承認を得て、2015年4月から地方都市の一部で、
数百万匹の遺伝子組み換え蚊を放つ実験をした。
15年末までに蚊の幼虫を82%減らせたという。同社はブラジルのほか、
カリブ海の英領ケイマン諸島や中米パナマなどでも同様の実験を実施している。


こうした結果をもとに、同社は米フロリダ州で、
デング熱チクングニア熱の予防を目的に遺伝子組み換え蚊を放つ実験を計画。
米食品医薬品局(FDA)に承認を求めている。
住民による反対運動が出ている中、同局は3月、同社の技術について
「人の健康や環境への大きな影響はない」とする予備調査の結果を公表した。


遺伝子組み換え技術は抜本的な解決策になり得るが、生態系を大きく変える恐れもある。
農研機構の笠嶋めぐみ研究員は「蚊を大幅に削減できれば、感染者を減らすことは可能だ。
ただ、効果の持続性や生態系への影響を長期的に調べる必要がある」と指摘する。