PCSK9阻害薬とはどのような薬?

スタチンで効果不十分な高コレステロール血症に効く
PCSK9阻害薬とはどのような薬?
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/soudan/201605/546615.html
回答者◎寺本民生先生(帝京大学臨床研究センター長)


PCSK9阻害薬は、
低比重リポ蛋白(LDL)受容体の分解を阻害するという新しい作用機序の薬で、
LDLコレステロール(LDL-C)は6〜7割も低下します。
スタチンで効果不十分な症例への使用が期待されていますが、
薬剤費が高額なため適正使用が求められています。


2016年4月、国内初のPCSK9阻害薬であるレパーサ皮下注140mg
(一般名エボロクマブ[遺伝子組換え])が発売されました。
家族性高コレステロール血症または高コレステロール血症で、
心血管イベントの発現リスクが高くスタチンで効果不十分な患者に、
原則140mgを2週間に1回、または420mgを4週間に1回皮下投与します。


PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)は、
蛋白質分解酵素の1つです。
細胞膜上にあるLDL受容体と結合してその分解を促進します。
そのため血中にPCSK9が過剰に存在すると、
LDL受容体数が減少し、LDL取り込みが抑制され、LDL-Cが上昇します。


エボロクマブはこのPCSK9に対する遺伝子組換えヒト型モノクローナル抗体です。
血中のPCSK9に結合し活性を阻害することで、血中LDL-Cの上昇を抑えることができます。


PCSK9阻害薬はスタチンと併用投与します。
スタチンで細胞内のコレステロール生合成が抑制されると、
転写因子が活性化されてLDL受容体の合成が亢進し、
LDLの取り込み増加を介して血中LDL-Cが低下します。
しかしこの転写因子はPCSK9の合成も促進するため、
PCSK9をこの抗体で取り去ることで、相加的なLDL-C低下効果が期待できます。
国内第3相試験では、
エボロクマブ140mg/2週とスタチンの併用で、75%前後のLDL-C減少率を示しました。


ただし、薬剤費が高額(16年4月時点で140mgが2万2948円)である上、
コレステロール血症の治療には長期の投薬が必要なことから、
医療費の負担増大が問題となっています。