グレープフルーツ以外に注意すべきかんきつ類

グレープフルーツ以外に注意すべきかんきつ類
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/soudan/201508/543363.html



【質問】
薬と相互作用する食品としてよく知られているグレープフルーツですが、
摂取量によって相互作用のリスクは変わるのでしょうか。
また、他のかんきつ類や食品と薬の相互作用などもあれば知りたいです。(30代女性)


【回答】
ザボンなどの近縁種でも相互作用あり オレンジジュース、緑茶などにも注意


回答者◎澤田 康文(東京大学大学院薬学系研究科育薬学講座教授)


同じグレープフルーツでも、果肉の赤いルビータイプは、
フラノクマリン類の含有量がホワイトタイプの半分であるため、
相互作用のリスクも半分程度と考えられます。
ゼリーやあめなど、グレープフルーツの加工品については、
明確なエビデンスは示されていません。
ただ、概ねフラノクマリン類の用量依存的に起こるため、
グレープフルーツの含有量が多いほど、
相互作用のリスクもある程度大きくなると予測されます。


一方で、薬との相互作用にはかなり個人差があります。
グレープフルーツと相互作用する薬で代表的なのがカルシウム拮抗薬です。
このうち、相互作用が強く表れやすいニソルジピン(商品名バイミカード他)を
グレープフルーツと服用しても、血中濃度の上昇が見られなかった例があります。
逆に、相互作用が起こりにくいとされるアムロジピンを服用していた患者が、
約2週間グレープフルーツを摂取したところ、
血圧が低下しショック状態になったとの報告もあります。
理由は不明ですが、CYP3A4の体内量や、
小腸と肝臓での分布比の個人差によるものと推測されています。


グレープフルーツは、摂取量が少量でも強い相互作用を起こすことがあり、
摂取しても安全な量という基準はありません。
なお、過去のわれわれの研究ではフェロジピン(スプレンジール、ムノバール他)を
グレープフルーツジュース200〜400mLと同時に服用した場合、
最大血中濃度が1〜3倍に上昇したとのデータがあります。


最近は多種多様な品種のかんきつ類が登場していますが、
それらの品種や産地などによっても相互作用のリスクは変わり得ます。
グレープフルーツと同じカンキツ類ミカン属ブンタン区に属する、
ハッサク、ザボンブンタン)などにはフラノクマリン類が含まれています(図1)。
その他のかんきつ類でも、相互作用の報告が見られますが、
今のところ、重篤な影響は報告されていません。

図1 かんきつ類の系統分類(一部抜粋)


カルシウム拮抗薬以外では、
シンバスタチン、アトルバスタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害薬で、
グレープフルーツジュースと服用すると血中濃度が上がることが分かっています。
シクロスポリンもグレープフルーツやザボンとの相互作用で
1.2〜2.4倍に血中濃度が上昇するとのデータがあります。
シクロスポリンは血中濃度が少し上がるだけでも副作用が起こりやすく、注意を要します。


一方で、グレープフルーツ、オレンジ、リンゴと一緒に服用すると
効果が減弱する薬剤もあります。
フェキソフェナジン、セリプロロール(セレクトール他)、
アテノロール(テノーミン他)、アリスキレンフマル酸塩(ラジレス)などです。
これらは果実に含まれるフラボノイドが
有機アニオントランスポーター(OATP)を阻害することで起こります。


その他、注意すべき食品・サプリメントとの相互作用として、
キチン・キトサンの摂取によりバルプロ酸ナトリウムデパケン)の血中濃度が低下し、
てんかんの発作が起きた例などがあります。
最近のわれわれの研究では、
切迫流産の治療に用いるリトドリン塩酸塩(ウテメリン他)で、
緑茶、烏龍茶などに含まれるエピガロカテキンガレートなどとの相互作用により
代謝が阻害され、作用が増強する例を発見しました。