三菱樹脂、甘草を量産 育成期間を半減

三菱樹脂漢方薬用植物を量産 育成期間を半減
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ08HNV_Y5A700C1TJC000/


三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱樹脂は農業関連ベンチャーと共同で、
漢方薬原料の薬用植物「カンゾウ(甘草)」を効率的に量産する。
三菱樹脂の植物工場を活用し、カンゾウの苗を短期間で栽培。
出荷までの期間が2年程度と、通常の半分程度に短縮することが可能になった。
来年度に10〜20ヘクタールの作付けを目指し、国産原料を求める製薬大手などに供給する。


農業関連のグリーンイノベーションと共同で技術を確立した。
三菱樹脂の植物工場で種や株分けした苗を植え、1カ月程度で育てる。
一般に屋外での苗の栽培には1年ほどかかるが、植物工場内で温度や湿度、
光量を調整するなど環境を整えて期間を短縮する。


生育した苗は国内の農家や自治体と協力して栽培してもらう。
畑に植えた後、約2年間育て薬効成分を含む根を自然乾燥させて出荷する考えだ。
通常は苗の栽培から収穫まで3〜4年かかるというが、
優良な苗を選定するなど工夫も重ね、早期の出荷を目指す。


グリーンイノベーションは農家の確保や栽培指導、
収穫したカンゾウの買い取りなどを担う。
三菱樹脂三菱ケミカル傘下の三菱化学などと連携し、
カンゾウの成分の加工や抽出を手掛けて、付加価値の高い製品にすることを検討する。


両社は2009年、共同研究に着手。
このほど「グリチルリチン酸」と呼ぶ抽出成分の平均含有量が、
漢方薬の原料に必要な水準(2.5%)を満たすカンゾウの栽培に成功した。
国産品として安定供給できる強みを訴え、医薬品や食品などのメーカーに売り込む。


両社は試験栽培してきた農地を中心に15年春に3ヘクタール弱で作付けを終えた。
16年には10〜20ヘクタールを目指し、10年後には100ヘクタールに増やす計画。
これにより、現行のカンゾウ内需の2割程度を供給できる体制を整える。


カンゾウは抗菌・鎮痛の作用があるとされ、多くの漢方薬で使われている。
医薬品のほか食品や健康食品、化粧品など幅広い用途がある。
国内需要の多くは中国からの輸入に頼っている。
だが中国では野生のカンゾウ乱獲が問題になっており、採取制限の動きもあるとされる。
国産化のニーズが高まり製薬会社などが栽培技術の確立に取り組んでいる。


三菱樹脂はビニールハウス用フィルムなど農業資材を手掛けており、
相乗効果を狙い植物工場を事業化してきた。
ただ、これまでは野菜の栽培が中心で、
カンゾウなど単価の高い作物の生産が課題となっていた。


甘草栽培